わたらせ渓谷鉄道とその周辺。 わたしは、わたらせ渓谷鉄道の全身である国鉄足尾線を、昭和59年(1984年)から5年間、撮影を行っていました。 緑深い景色の中を、短い編成のディーゼルカーが走る風景はとても絵になっていました。
撮影当初、足尾駅以南の緑におおわれた山の風景と、それ以北の荒涼とした山の風景との違いにどういう意味があるのか、その頃の私はまったく気にも留めていませんでした。
ある日の早朝、貨物列車の撮影のため、精錬所のある足尾本山駅近くを訪れました。 精錬所から出される白い煙が、対岸の間藤(まとう)の町をすっぽりと覆っていました。 気分の悪くなりそうな臭いでした。
その後、足尾銅山に関して調べるようになりました。 その中での大きな問題は、鉱毒事件でした。 精錬所から出される有毒ガスによって山の木が枯れ、土砂崩れしやすい状態のところで集中豪雨に見舞われる。 山に野積みしてあった、精錬したカス(スライム)が川に流れ込む。 魚が大量に死ぬ。 下流の都県の田畑に鉱毒が流れ、作物が実らなくなる。 といった被害が過去にありました。
栃木県にあるわたらせ遊水池は、その下流に鉱毒を流さないように、ここで沈殿させているわけです。 また、足尾町の数ヶ所に、沈殿のための階段状のプールが並んでいます。 通洞(つうどう)駅のすぐ北には堆積場(大きな砂防ダム)があって、ここに溜まった水は、入浴剤を撒いたような濃い緑色をしています。 さらに、草木ダムには、カドミウム等の鉱毒の濃度を調べるセンサーが設置されています。
鉱毒に関しては、以上のような対策が取られています。
以前私がかいだ精錬所の煙は、精錬方法が改良されてからの、有毒ではないガスだったようです。
ただし、鉱毒事件は、過去にはなりきっていない、今でも危険と隣合わせの問題なのです。。。
「参考資料」 (←クリックすると飛びます)
(なお、文章中に不適切な表現がありましたらお詫びいたします)