大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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霧の狐道 1

2008-01-16 19:34:22 | E,霧の狐道
 霧の狐道


 プロローグ


 雲が流れる。
碧青の空に雲が流れる。
雲それぞれは大きさも形も違う。
でも、それらのすべてが同じ方向に流される。
雲は、何処から来て、何処に行くのだろう。

 風が吹いている。
秋にしては、少し寒い。
木々の木の葉が揺れ、枝を離れた数枚が風に流されながら地面に落ちる。
一枚一枚は、色も形も違う。
でも、それらのすべては地面に到達して吹き溜まる。

 時が刻まれている。
喜びや悲しみを伴って、時が刻まれている。
時は、誰にも平等に降り注ぎ流れる。
流れる時の中で、人はそれぞれ違う人生を歩む。
時には、それらが交差し、あるいは、それらが絡まりながら。
そして、人は、ほんの些細な喜びや悲しみを感じながら生きる。
でも、それらのすべてが無かったとしても、時にとって不都合は無い。
何事も無かったかのように、人は未来に向かって流される。
生きて行くことの意味を知りえぬまま、時は過ぎ去って行く。

人は、何処から来て、何処に行くのだろう。
あの流れる雲のように。



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