大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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霧の狐道126

2008-10-08 19:43:58 | E,霧の狐道
    病院

  6、処置室

 俺は、三時間も掛かって、隣町の大きな総合病院に、救急で入院した。
普通は、一時間で行けるところを、爺さんが山道に迷って三時間掛かってしまったからだ。
 その間、爺婆のカラオケは延々と鳴り響いていた。
もちろん、“雨あがりの夜空に”一曲ではない。
他の曲も掛かっていたが、三時間の内、少なくとも一時間は“雨あがりの夜空に”だった。
 俺の耳の中には、何回も繰り返された“雨あがりの夜空に”が、今もぐるぐる渦巻いている。
もう、歌詞を見なくても最初から最後まで完璧に歌えるようになってしまった。
静かな夜の病院の椅子に座っていると、遠くの方に“雨あがりの夜空に”が小さく鳴っているように思える。

 俺は、爺さんと婆さんに礼を言って、住所と電話番号を聞いた。
後に、親から礼をしてもらおうと思ったからだ。
俺は、お金が無いから、礼は口だけだ。
爺さんが言った。

「 今度から、飛び込むのはプールにしろ、バ~カ!」

何だ、クソジジイと思ったが、助けて貰った手前、大人しく頷いておいた。
そして、爺さんと婆さんが帰って行った。

 病院での診察の結果は、左足打撲に左鎖骨を骨折している疑いがあると言うことで早速入院となった。
一応、レントゲンを撮ったが、直接の診断は主治医が決まってから、主治医に聞けと言うことだった。
当直は、新米の医師のようで頼りない。
でも、応急処置を受け、鎖骨バンドと痛み止めで気分的に楽になった。



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