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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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霧の狐道125

2008-10-06 19:12:45 | E,霧の狐道
 爺さんと婆さんのマイクデュエットは延々と続き、山にこだましている。
運転席の屋根の上に取り付けてあるスピーカーから嵐のような大音量の歌声が鳴り響く。

♪(´∀`)ノ゛ こんな事いつまでも 長くは続かない
       いい加減明日のこと 考えた方がいい♪
       どうしたんだ Hey Hey Baby
       おまえまでそんな事言うのォ
       いつものようにキメてェ ぶっ飛ばそうぜェ~♪ ヽ(´∀`)ノ

♪(´∀`)ノ゛ Oh~ 雨あがりの夜空に輝く~
       Woo~ 雲の切れ間にちりばめられたダイヤモンド♪
       こんな夜におまえに乗れないなんてェ~
       こんな夜に発車できないなんてェ~~♪ ヽ(´∀`)ノ

歌声は山々にギュンギュン反射して渦巻く。

“ う、ウルサイ・・・。
 強烈な爺婆だ。
 体中、音の振動で痛みが走る・・・。”

俺は、この歌声に熟睡中のクマやタヌキやムササビはビックリしてるだろうなと思った。

♪(´∀`)ノ゛ おまえについてるラジオ 感度最高!
       スグにいい音させて どこまでも飛んでくゥ♪
       どうしたんだ Hey Hey Baby
       バッテリーはピンピンだぜェ
       いつものようにキメてぶっ飛ばそうぜェ♪ ヽ(´∀`)ノ

♪(´∀`)ノ゛ Oh~ 雨あがりの夜空に輝く~
       Woo~ ジンライムのようなお月様~♪
       こんな夜におまえに乗れないなんてェ
       こんな夜に発車できないなんてェ♪ ヽ(´∀`)ノ
       こんな夜におまえに乗れないなんてェ~
       こんな夜に発車できないなんてェ~~♪ ヽ(´∀`)ノ

「 イェイ~、気持ちいいのう~!!」
「 爺さん、もう一発、行くかのぉ~!」
「 よし分かった、エンドレスに設定するぞ!」
「 分かったよ、爺さん!」

 俺の体は、大音量にさらにズキズキ痛む。
そんな事はお構い無しに、爺さんと婆さんのカラオケが再び始まってしまった。

♪(´∀`)ノ゛ この雨にやられてェ~ エンジンいかれちまったァ~
       おいらのポンコツゥ~ とうとう潰れちまったァ~♪
       どうしたんだ Hey Hey Baby
       バッテリーはピンピンだぜェ
       いつものようにキメてェ~ ぶっ飛ばそうぜェ~♪ ヽ(´∀`)ノ


俺は、荷台で揺られながら泣きそうな顔をして思った。

“ もう、いい・・・・・。
 駅前の外科だったら、家から便利だし・・、と思ったが、もう無駄。
 このまま、地獄の果てまで付き合おう。
 これも、持って生まれた俺の運命なんだ・・。”

軽トラックは、俺の希望する方向とは反対に、忌野清志郎の“雨あがりの夜空に”を山々に響かせながら、夜の山道を疾走していた。



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