俺は、向こうのベッドには人がいないと今まで思い込んでいた。
でも、実際は、右のベッドはカーテンに囲まれていて、中を一度も見たことが無い。
“ 誰もいないんだったら、カーテンを閉めておく必要は無いし・・・。
普通は、開けて置くよな・・。
このベッドは、空だったしカーテンが開いていたもんな。
救急の先客がいて、俺よりも前に寝かされているのかも・・・。”
俺は、微かに波打っているカーテンを見ながら思った。
“ ちょっと、声を掛けてみようかな・・・。
・・・・・・・・。
どうしようかな・・・・。
・・・・・・・・。
まあ、声ぐらい掛けても、いいよな・・・・。”
俺は、恐る恐るカーテンの向こうに聞いてみた。
「 誰か・・・、いる?」
俺はカーテンの向こうの様子を窺った。
“ ・・・・・・・・・・・・・・・・。”
カーテンは、まだ微かに波打っている。
“ ・・・・・・・・・・。”
でも、返事は無い。
俺は動いて行くことが出来ないので、仕方なくベッドに横になったまま、カーテンの下に眼をやった。
隣のベッドの足がカーテンの下から覗いている。
“ カーテンを下からそ~っと捲れないかな・・・・。”
俺はカーテンに手を伸ばした。
“ 届かないぞ、くそっ!!”
ベッドとカーテンは少し離れている
俺の手はカーテンに届かない。
“ ちょっと、距離があるな・・・・。”
俺は、ベッドでの体勢をカーテンの方にずらそうとした。
そのとき、隣の部屋と処置室の間の扉が開く音がした。
“ ガタッ。”
看護婦さんが処置室に入って来た気配がする。
俺は慌てて手を引っ込めた。
そして、眼だけで右上をチラッと見た。
“ あ、違う人か・・。”
俺の相手をしてくれた中年の看護婦さんではない。
もう少し若い感じの看護婦さんだ。
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