日々の恐怖 5月13日 やれること
実家にある掛け軸の話です。
それは、いつ誰が買ってきたのかも定かでない掛け軸です。
実家の床の間には、龍神様の描かれた小ぶりの掛け軸がある。
聞けば祖母が嫁いできた頃には既にあったって言うから、既に70年以上前のものだ。
この掛け軸に悪さをすれば良くない事が起こる。
私が5歳くらいの時の話だ。
お盆ってこともあって、いとこが家に泊まりに来た。
同い年の男の子は結構な暴れ者で、龍神様の掛け軸に向かって物を投げ始めた。
うちの家族やその子の母親は、
「 それは一応神様なんだから悪さをするな。」
みたいなことを言うんだけれど、いとこは言う事を聞かずに掛け軸に物をぶつけていた。
その夜、その男の子が大泣きして、その声で家族中目が覚めた。
「 手がぁ・・!手がぁ・・!」
って言って、男の子ギャン泣き状態。
見ると、その子の右手がパンパンに腫れていた。
その腫れ方っていうのがちょっと変わっていて、薄手のビニール手袋に水をパンパンに入れると、手の平の所に水が溜まって風船みたいになるんだけれど、まさにそんな腫れ方だった。
救急で病院に行って見てもらったら、右手に水が大量に溜まっていた。
案の定、
「 ほら、言わんこっちゃない!
悪さするからだ!」
ってなったんだけれど、その翌年、更に暴れ者になった男の子はあろうことか、その掛け軸をわざと蹴っ飛ばした。
「 祟りなんてねーよ、やれるならやってみろよ!」
って言葉付きだった。
そしたら今度は、次の日に何も無いところですっころんで、その拍子に右足の骨とあばら骨を折った。
どうやら龍神様、やれることをやったらしい。
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