日々の恐怖 5月23日 掃除機
昔住んでたアパートには、
“ 夜中に掃除機をかけてはいけない。”
という決まりがあった。
騒音が迷惑とかじゃなく、夜中に爪を切ってはいけないとか言うのと同じしきたり的なものだと思った。
入居する時大家にそれとなく言われたし、近所の人の挨拶でも言われた。
それで、
「 なんで、なんで?」
と聞いて回ったら、
「 何か、掃除機かけた時だけ変なものが出るんだ。」
って言われた。
そんなバカな話があるかと思って、一応隣室の住人が不在の夜に掃除機かけたった。
だってそうだろ。
爪切りとかならまだなんとなく話としてわかるけど、掃除機みたいな文明の利器に取りつく妖怪なんているはずがない。
ところが、いやー出た出た。
壁から子供みたいな細くて2mくらいある腕が出て、蛇みたいに床をはってんの。
自分の仮説完全崩壊して、思わず、
「 なんでだよ!」
って叫んで、部屋から逃げ出してコンビニで夜明けを迎えた。
恐る恐る戻ってみたら、手は消えてたが掃除機はコンセントからプラグが抜けて、あと冷蔵庫のドアが開いてた。
“ アイツ、電源切った?”
“ 冷蔵庫のもの、持って行った・・・?”
でも、冷蔵庫の中身は減っていた感じはなかった。
なんか、つくづく意味わからんかった。
大家に聞いても純粋に由来不明だった。
今までアパートで死んだ人とかもなく、とにかく出ることだけわかっているらしい。
隣人に聞いたら、隣人が夜掃除機かけたときは足が出たらしいし、
「 もう引っ越したいわ!」
って言いつつも、掃除機かけなかったらどうってことないし、結局、2年も住んでしまった。
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