日々の恐怖 1月15日 お得な物件(4)
なんとなく部屋を障子ごしに覗いたら仏壇があり(今思うと、仏壇かどうかはわからない)、部屋の上のほうに、物故者の写真が額縁入りで大量に飾られていた。
結構壮観な並びで、
“ さすが早死に名士の家計だな・・・・。”
と感心して、通り過ぎようとして妙な違和感を感じた。
1個だけ写真がない額縁があったのだ。
こういう時に、他と異質な物を注視してしまうのは人の常であろう。
ついついその額縁を見てしまい、自分は心の底から恐怖した。
朱色の墨で、自分の名前と生年月日が書いてあったのだ。
周りを慌てて見渡すと、台所でなにかしゃべっている声が聞こえる。
黙ってさっきの部屋に戻り、急な仕事の用を思い出したことを告げて、家を脱出して店に戻らずに、色々な事を投げ出して逃げた。
FC店だったために本部の方を通して、一切その大家さんに関わらずに権利関係の処理できたのが、不幸中の幸いだった。
ホテル暮らしを転々として実家にも連絡を取らなかったけど、後で聞いたところによると、最初のうちは頻繁に実家に連絡があったらしい。
今は東京に住んでいるけど、未だに怖くて大阪には帰れないし、住民票も移していない。
地名をある程度詳しく言いすぎたことに後悔して、話を続けるか迷った。
昔のことだからもう平気と軽く言い始めたけど、またビクビクする日が始まる。
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