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日々の恐怖 7月4日 左手(3)

2023-07-04 22:09:19 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 7月4日 左手(3)





 彼女は祠に手をつっこむと無造作に石を掴み、

「 ねえ、せっかくだから、おみやげにこれ持って帰ろうか?」

と、Kさんに差し出した。
Kさんは彼女から石を受け取ると、

「 やめとけよ、バカらしい。」

と言いながら、元に戻せば良かったのに、石を林の奥に放り投げてしまった。
肝試しはこれで終わったが、その翌日に大事件が起こった。


 電車通学だったKさんは、いつものように駅で彼女と待ち合わせ、2人で電車が来るのを待っていた。
ホームでの彼女はかなり様子が変だったらしい。
酔っ払ったようにふらふらしてて、今にも倒れそう。

「 おい危ないぞ。
体調悪いのか?」

心配するKさんの問いかけに彼女は、

「 大丈夫、大丈夫。」

と言うだけで相変わらずふらふらしている。
そのまま彼女は身体を揺らしながら、線路に落ちそうになった。

「 危ない!!」

Kさんは左手で彼女の腕を掴み、転落を阻止する。
が、なぜか左手がKさんの意思に反して、一旦掴んだ彼女の腕を放してしまった。
彼女はそのまま倒れ込み、上半身がホームからはみ出たところを入線してきた電車にはねられた。
突然の出来事にKさんはへたり込み、泣きながら彼女の名前を呼び続けていた。
不幸中の幸いか、周囲にいた人達がKさんは彼女を助けようとしていたと証言してくれたおかげで、事件は不幸な事故として処理された。
しかし、Kさんは強い自責の念に苛まれた。












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