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日々の恐怖 9月3日 小さくて白っぽい動物(2)

2021-09-03 17:52:16 | B,日々の恐怖



 日々の恐怖 9月3日 小さくて白っぽい動物(2)




 イタチに似ていたが耳が尖っており、何よりイタチよりも一回り小さかった。

” なんでこんなところに動物が・・・・?”

と思ったが、その動物に注目している職員は誰もいなかった。
 気が付いていないだけかとも思ったが、足の間をああもスレスレですり抜けられて、気が付かない方がおかしい。
どうやら、動物の姿が見え、なおかつ驚いているのは私だけのようだった。
 動物は職員の足の間をチョロチョロとした動きでホールの出口に向かい、やがて見えなくなった。
私はそれを目で追いすぎ、あのような場でキョロキョロと落ち着きがなかったと、新年会終了後に現場主任からお叱りを受けた。
 主任のお小言の後は、いつも通りの仕事が待っている。
私は特別養護ホームに勤務しているので、盆も正月も関係ない。
それは利用者にしても同じようなもので、いつもと変わらないメンバーに苦笑しつつ、今年もよろしくお願いします、と一人ひとりに挨拶をして回った。

「 イヌが出たな。」

私の挨拶に唐突にそう返したのは、普段口数の少ないAさんだった。
 彼は元々の寡黙な性格に加え、軽度の認知症だったため、職員の声かけにすぐに応えることの方が少なかったのだが、今回の予想外の言葉に私は首を傾げた。

「 はい?」
「 イヌが出たろう。
あんた達が話を聞きに行っているときだ。
こんな小さいのが、出たろう。」

こんな、とAさんはぎこちない手でバレーボールくらいの大きさを示した。
それを見て、私は先ほど見た小さな動物のことを思い出した。









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