日々の恐怖 3月22日 井戸(2)
鳶にあれは何だと聞いたら、井戸らしいと答えた。
現場は海の近く、地下10mに井戸?
水が嫌って程湧き出る場所に石板で蓋された井戸?
誰がどの時代にどんな方法で、この水が湧き出る地下10mに井戸掘って、しかも石板で蓋して埋めたんだ?
そして地上には古いお地蔵さんが収められている祠。
ここは弄ってはいけない場所なのは明らかだった。
所長にここには何があったのか聞いたら、ここには立体駐車場があって車が落下する事故もあり、不吉な場所だから御祓いを何回もしたと言った。
とにかく事故だけは気をつけてやってくれと念を押された。
地下にあった井戸らしきものも基礎工事のコンクリートで埋められ、工事は地上階に移った。
とにかく現場が上手くいかない。
言い訳を埋め立てた井戸のせいにするわけじゃないけど、計算出来ない人工(※にんく: 作業員一人当たりの一日労働に対する原価)が掛かった。
それは他の業者でも同じで、想定外の人工で赤字が続いてとある業者が地上2階で倒産し逃げた。
俺もこのままなら最後には600万相当の赤字になると計算し、本社にかけ合ってこの工事から手を引きたいと申し出た。
本社は後施工になった分突貫で人工も掛かるだろうから、赤字分はなんとかするから最後までやってくれと話してきた。
俺はとりあえず月々の支払いを保障してくれるならと工事を続ける事にした。
鉄骨の立て方でそれは起こった。
7~8階だったと思う。
通りが合わないらしい鉄骨屋が大騒ぎしだした。
建物が真っ直ぐ立たないらしい。
こんな事は俺は聞いた事ないし、鉄骨屋も監督も墨出し屋も頭抱えていた。
俺は何かマンション建設を邪魔されてると思って、所長にもう一度御祓いをしようと願い出た。
この時はほんとそんな雰囲気が現場を包んでいて、所長もすぐ段取りしてコンクリート打設を止めよう御祓いをした。
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