日々の恐怖 3月30日 伊藤君の部屋(1)
今から20年ぐらい前 のことです。
当時大学1年で、たまたま同じサークルにいた、それまであまり親交もない同級生の伊藤君から、
「 今日、うち(彼のアパート)に来ない?
相談したいことがある。」
と真剣な顔で言われ、訳も分からず彼について、そのアパートへ行った。
6畳一間、風呂なし、共同便所で築20年は経ってるような、しかし家賃は2万円。
考えれば、今では文化財級かも、でも20年前当時は大学1年なんて半分はそんな感じだった。
伊藤君の部屋は、意外とこざっぱりした感じ。
俺が聞いた。
「 で、相談て何なの・・・・?」
伊藤君は言いよどんでいたが、押し入れを指さして、
「 何かおる。
見てっ!!」
正直、伊藤君の必死な顔に笑い出しそうになったけど、こらえた。
俺が、
「 何がおるんや?」
と質問すると、 伊藤君は、
「 毎晩、あっちから何かが出てくるんや・・・・。」
と答えた。
俺は、
” 意味分からん・・・?”
と思いつつも、とりあえず押し入れのふすまを開ける。
たぶん伊藤君は片づけておいたんでしょう、中身は空っぽだった。
俺が、
「 なんも、無いで・・・?」
と怪訝な顔で伊藤君の方を見ると、伊藤君は、
「 そっ、そこに、何か貼ってるでしょう?
見て!見て!!」
と言うやいなや、何故か部屋を大急ぎで飛び出して行った。
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