農研機構は、青森県・岩手県・秋田県・山形県との共同研究により、イチゴ新品種「そよかの」を育成した(9月5日発表)。「そよかの」は、寒冷地や高冷地における露地栽培、半促成栽培に向く品種である。晩春~初夏に収穫できる大粒のイチゴで、形の揃いが良く多収であり、果皮は明るい赤色である。
イチゴは生食用、ケーキ等業務用として年間を通して需要があるが、6月~11月にかけては生産量が落ち込み、端境期となっている。東北地方や北海道などの寒冷地や高冷地では、その冷涼な気候を生かして、6月前後に果実を出荷する露地栽培や半促成栽培が行われており、イチゴの周年供給に寄与している。しかし、これらの栽培で用いられている品種は、収穫期後半の果実の小粒化や形の乱れ、収穫後の果皮色の黒変や着色不良などの点で改良の余地があった。
◇卸売数量(H30農林水産省青果物卸売市場調査より)
月 卸売数量
1月~4月 1万トン~2万トン
5月 1万トン
6月~11月 千トン~2千トン(端境期)
12月 1万トン
新品種「そよかの」の特徴
1. 多収性で極晩生の「豊雪姫とよゆきひめ」を母とし、食味が良く果実が硬めであり、うどんこ病レース0抵抗性をもつ「さちのか」を父とした交配を2008年に行い、選抜により「そよかの」を育成した。
2. 寒冷地や高冷地における露地栽培や半促成栽培に適する極晩生の一季成り性品種。
3. 葉は大きく立ち上がって大株となり、ランナーも十分に発生する。
4. 露地栽培および半促成栽培の一種である低温カット栽培のいずれにおいても、平均1果重は16g程度と、同時期に収穫できる「北の輝きたのかがやき」や「豊雪姫」(いずれも1粒12g~14g前後)より大粒である。また「そよかの」は、乱形果や奇形果の発生が少ないことから、高い商品果率が期待できる。 商品果収量は「北の輝」より多く、「豊雪姫」と同程度である。
5. 果実は円錐形で揃いに優れ、果皮は明るい赤色で、収穫後の果皮色の黒変は認められていない。果実は「北の輝」より柔らかく、「豊雪姫」より硬くなる。果実糖度は中程度、酸度はやや高く、食味は中~やや良である。
6. 東北地方等で発生がみられるうどんこ病レース0に対して、「北の輝」や「豊雪姫」は罹病性であるが、「そよかの」は抵抗性を示す。萎黄病いおうびょうに対しては罹病性である。
◆用語解説
〇露地栽培
作物を屋外の畑で栽培することを「露地栽培」という。日本におけるイチゴ生産は1960年代頃まで露地栽培が主流で、露地栽培によるイチゴは、晩春~初夏に収穫される。その後、ビニールハウスや暖房設備の普及により、イチゴの収穫期間は拡大し、今ではそれらの設備を用いて冬~春(12月~5月頃)に果実を生産する「促成栽培」が主流となっている。その結果、冬場に生産のピークが移る一方、晩春~初夏の生産量はかつてより落ち込み、端境期となっている。
〇半促成栽培、低温カット栽培
「半促成栽培」は、主に4月から7月頃にかけて果実を収穫する作型で、北海道や東北地方などの寒冷地や高冷地で行われている。半促成栽培では、畑への苗の植え付けを前年の晩夏~秋に行うが、冬季における加温の有無により、加温半促成栽培、無加温半促成栽培などに細分化される。
「低温カット栽培」は無加温半促成栽培の一種で、冬季に灯油等を用いた加温をせず、トンネル被覆やべたがけ等による保温のみで栽培する。
〇極晩生(ごくばんせい)
作物の品種には、収穫時期が早いもの(早生)から遅いもの(晩生)まで様々あり、中でも特に遅いものを極晩生という。極晩生のイチゴ品種は、主に5月から7月にかけて果実を収穫する露地栽培や半促成栽培に利用される。
〇一季成り性イチゴ(いっきなりせいイチゴ)
イチゴには、一季成り性と四季成り性がある。一季成り性イチゴは、低温、短日条件で花芽を作り、主に冬から春にかけて収穫される。代表的な品種に、「とちおとめ」「福岡S6号(商標名:あまおう)」「恋みのり」などがある。
四季成り性イチゴは、夏季の長日条件下でも花芽を作り、夏や秋でも果実を収穫できる。四季成り性イチゴは、主に夏秋期のケーキ用に利用されている。
〇うどんこ病レース0(うどんこびょうレースゼロ)
うどんこ病はイチゴの重要病害の1つで、うどんこ病菌の感染により発症する。発症すると、葉や果実がうどんこ(小麦粉)をかけたように白くなり、収量や商品価値が低下する。イチゴのうどんこ病菌には2つのタイプ(レース0とレース1)が知られており、それぞれ感染するイチゴ品種が異なる。レース0は、東北地方や北海道でも発生が認められている。
〇豊雪姫(とよゆきひめ)
農研機構東北農業研究センター育成の極晩生の一季成り性品種。北東北地域における露地栽培、半促成栽培に利用されており、収量が多いことが特徴である。
〇ランナー
イチゴは株からランナー(匍匐枝、匍匐茎ともいう)とよばれる"つる"を伸ばし、その"つる"の先に子株をつける。これらの子株は親株と同じ遺伝子をもつクローンであり、これを利用して苗を増やす。
〇北の輝(きたのかがやき)
農研機構東北農業研究センター(旧野菜・茶業試験場盛岡支場)育成の極晩生の一季成り性品種。促成栽培用品種の収穫が終わった頃から収穫が始まり、主に北東北地域における露地栽培、半促成栽培に利用されている。果実が硬く輸送性に優れる。
◆「そよかの」の特性
植物体特性:ランナー数8.9(6月下旬)
収量特性:平均1果重 16.5g 商品果収量 果重150.5(kg/a)
果実特性(露地栽培):硬度0.51(N/φ2mm) 糖度9.1(° Brix) 酸度0.57(%)
果実:果実は円錐形で、揃いが良く、果皮は明るい赤色
品種登録出願番号:
第33721号 (令和元年7月4日出願公表)
今日の天気は曇り、時々晴れ、昼1時ごろとても強い雨。
午後3時ごろ、雨が止み、空を見たら雲・雲だ。一昨日の4時ごろに見た虹を思い出した。
イチゴは生食用、ケーキ等業務用として年間を通して需要があるが、6月~11月にかけては生産量が落ち込み、端境期となっている。東北地方や北海道などの寒冷地や高冷地では、その冷涼な気候を生かして、6月前後に果実を出荷する露地栽培や半促成栽培が行われており、イチゴの周年供給に寄与している。しかし、これらの栽培で用いられている品種は、収穫期後半の果実の小粒化や形の乱れ、収穫後の果皮色の黒変や着色不良などの点で改良の余地があった。
◇卸売数量(H30農林水産省青果物卸売市場調査より)
月 卸売数量
1月~4月 1万トン~2万トン
5月 1万トン
6月~11月 千トン~2千トン(端境期)
12月 1万トン
新品種「そよかの」の特徴
1. 多収性で極晩生の「豊雪姫とよゆきひめ」を母とし、食味が良く果実が硬めであり、うどんこ病レース0抵抗性をもつ「さちのか」を父とした交配を2008年に行い、選抜により「そよかの」を育成した。
2. 寒冷地や高冷地における露地栽培や半促成栽培に適する極晩生の一季成り性品種。
3. 葉は大きく立ち上がって大株となり、ランナーも十分に発生する。
4. 露地栽培および半促成栽培の一種である低温カット栽培のいずれにおいても、平均1果重は16g程度と、同時期に収穫できる「北の輝きたのかがやき」や「豊雪姫」(いずれも1粒12g~14g前後)より大粒である。また「そよかの」は、乱形果や奇形果の発生が少ないことから、高い商品果率が期待できる。 商品果収量は「北の輝」より多く、「豊雪姫」と同程度である。
5. 果実は円錐形で揃いに優れ、果皮は明るい赤色で、収穫後の果皮色の黒変は認められていない。果実は「北の輝」より柔らかく、「豊雪姫」より硬くなる。果実糖度は中程度、酸度はやや高く、食味は中~やや良である。
6. 東北地方等で発生がみられるうどんこ病レース0に対して、「北の輝」や「豊雪姫」は罹病性であるが、「そよかの」は抵抗性を示す。萎黄病いおうびょうに対しては罹病性である。
◆用語解説
〇露地栽培
作物を屋外の畑で栽培することを「露地栽培」という。日本におけるイチゴ生産は1960年代頃まで露地栽培が主流で、露地栽培によるイチゴは、晩春~初夏に収穫される。その後、ビニールハウスや暖房設備の普及により、イチゴの収穫期間は拡大し、今ではそれらの設備を用いて冬~春(12月~5月頃)に果実を生産する「促成栽培」が主流となっている。その結果、冬場に生産のピークが移る一方、晩春~初夏の生産量はかつてより落ち込み、端境期となっている。
〇半促成栽培、低温カット栽培
「半促成栽培」は、主に4月から7月頃にかけて果実を収穫する作型で、北海道や東北地方などの寒冷地や高冷地で行われている。半促成栽培では、畑への苗の植え付けを前年の晩夏~秋に行うが、冬季における加温の有無により、加温半促成栽培、無加温半促成栽培などに細分化される。
「低温カット栽培」は無加温半促成栽培の一種で、冬季に灯油等を用いた加温をせず、トンネル被覆やべたがけ等による保温のみで栽培する。
〇極晩生(ごくばんせい)
作物の品種には、収穫時期が早いもの(早生)から遅いもの(晩生)まで様々あり、中でも特に遅いものを極晩生という。極晩生のイチゴ品種は、主に5月から7月にかけて果実を収穫する露地栽培や半促成栽培に利用される。
〇一季成り性イチゴ(いっきなりせいイチゴ)
イチゴには、一季成り性と四季成り性がある。一季成り性イチゴは、低温、短日条件で花芽を作り、主に冬から春にかけて収穫される。代表的な品種に、「とちおとめ」「福岡S6号(商標名:あまおう)」「恋みのり」などがある。
四季成り性イチゴは、夏季の長日条件下でも花芽を作り、夏や秋でも果実を収穫できる。四季成り性イチゴは、主に夏秋期のケーキ用に利用されている。
〇うどんこ病レース0(うどんこびょうレースゼロ)
うどんこ病はイチゴの重要病害の1つで、うどんこ病菌の感染により発症する。発症すると、葉や果実がうどんこ(小麦粉)をかけたように白くなり、収量や商品価値が低下する。イチゴのうどんこ病菌には2つのタイプ(レース0とレース1)が知られており、それぞれ感染するイチゴ品種が異なる。レース0は、東北地方や北海道でも発生が認められている。
〇豊雪姫(とよゆきひめ)
農研機構東北農業研究センター育成の極晩生の一季成り性品種。北東北地域における露地栽培、半促成栽培に利用されており、収量が多いことが特徴である。
〇ランナー
イチゴは株からランナー(匍匐枝、匍匐茎ともいう)とよばれる"つる"を伸ばし、その"つる"の先に子株をつける。これらの子株は親株と同じ遺伝子をもつクローンであり、これを利用して苗を増やす。
〇北の輝(きたのかがやき)
農研機構東北農業研究センター(旧野菜・茶業試験場盛岡支場)育成の極晩生の一季成り性品種。促成栽培用品種の収穫が終わった頃から収穫が始まり、主に北東北地域における露地栽培、半促成栽培に利用されている。果実が硬く輸送性に優れる。
◆「そよかの」の特性
植物体特性:ランナー数8.9(6月下旬)
収量特性:平均1果重 16.5g 商品果収量 果重150.5(kg/a)
果実特性(露地栽培):硬度0.51(N/φ2mm) 糖度9.1(° Brix) 酸度0.57(%)
果実:果実は円錐形で、揃いが良く、果皮は明るい赤色
品種登録出願番号:
第33721号 (令和元年7月4日出願公表)
今日の天気は曇り、時々晴れ、昼1時ごろとても強い雨。
午後3時ごろ、雨が止み、空を見たら雲・雲だ。一昨日の4時ごろに見た虹を思い出した。