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マイクロ波を電力に変換する高感度ダイオードを開発

2019-09-25 | 科学・技術
 富士通株式会社の河口研一事業部長付と首都大学東京の須原 理彦教授らは、微弱なマイクロ波を電力に変換できる高感度のナノワイヤバックワードダイオード整流素子を開発した。本研究成果は、ポーランド・クラクフで開催中の国際会議「European Solid-State Device Research Conference(ESSDERC)」で2019年9月26日に発表される。
 本格的なIoT時代の到来に備え、センサーネットワークのバッテリーレス化を実現する環境電波発電が注目されている。しかし、従来の整流素子は、微小電圧における整流特性や素子サイズにより、環境電波の多くが該当するマイクロワット(μW)以下の微弱電波を電力に変換することが難しく、高感度なダイオードが求められていた。
 本研究グループは、小さな電圧領域においても優れた整流特性を持つバックワードダイオードを髪の毛の約1000分の1の細さにまで微細化したナノワイヤの形成に成功した。開発したナノワイヤバックワードダイオードは、従来のショットキーバリアダイオードの10倍以上の感度を世界で初めて達成した。
 本技術により、100ナノワット(nW)レベルの微弱なマイクロ波を電力に変換し、センサーなどの機器を駆動させることができる。今後、ダイオードと電波を集積するアンテナの設計を最適化し、定電圧化のための電源制御を追加することにより、環境電波発電の実現が期待される。即ち、携帯電話基地局などから放射されている環境電波から電力を生み出す環境電波発電に役立つ技術として期待される。
 研究の背景と経緯
 本格的なIoT時代の到来に備え、センサーネットワークのバッテリーレス化を実現するために、近年、身の回りの微小なエネルギーを電力に変えるエネルギーハーベスティング技術が注目されている。その1つとして、通信に利用するために携帯電話基地局から放射され、空間に遍在する微弱な電波(マイクロ波)を電力として再利用する環境電波発電があげられる。
 環境電波発電に用いる装置は、電波を集めるアンテナと、その電波を整流する整流素子(ダイオード)からなる電波発電素子で構成される。ダイオードのマイクロ波に対する応答性能(感度)は、整流特性の急峻性とダイオードのサイズ(容量)に大きく依存する。一般的に電力変換用途のダイオードには、金属と半導体の接合構造で生じる整流性を用いたショットキーバリアダイオードが使われている。しかし、微小電圧においての整流特性が緩慢で、かつ素子サイズが数マイクロメートル(μm)以上あり容量が大きいため、マイクロワット(μW)以下の微弱なマイクロ波への感度が十分ではなく、環境電波を電力へ変換することが困難だったため、ダイオードの高感度化が求められていた。
 研究の内容
 本研究グループは、異なる2種類の半導体を接合することによって整流性が生じ、かつ従来のショットキーバリアダイオードとは異なる原理(トンネル効果)で電流が流れることにより、ゼロバイアスでの急峻な整流動作が可能なバックワードダイオードを微細化・低容量化することで、より高感度なダイオードを実現すべく開発を進めてきた。これまでバックワードダイオードは、積層された化合物半導体薄膜をエッチングによりディスク状に加工して形成されていたが、加工による損傷を受けやすい材料のため、サブミクロンサイズまで微細加工してダイオードを動作させることは困難であった。
 本研究グループは、接合される半導体材料の構成元素の割合(組成)および添加不純物濃度の精緻な調整により、バックワードダイオード特性に求められるトンネル接合構造をn型のインジウム砒素(InAs)とp型のガリウム砒素アンチモン(GaAsSb)からなる直径150nmのナノワイヤ内において結晶成長させることに成功した。さらに、そのナノワイヤの周囲を絶縁素材で埋め込む加工およびワイヤの両端に金属で電極膜を形成する加工において、ナノワイヤを傷つけることなく実装する新技術を活用した。これらにより、従来の化合物半導体の微細加工技術では困難だったサブミクロンサイズのダイオードの形成が可能になり、従来のショットキーバリアダイオードと比較して10倍以上の感度を持つナノワイヤバックワードダイオードの開発に世界で初めて成功した。
 現在の携帯電話用の通信回線規格4G LTE/WiーFiで利用されるマイクロ波周波数2.4GHzで検証した際の感度は、従来のショットキーバリアダイオードの感度(60kV/W)に対して、約11倍(700kV/W)である。これにより、100nWクラスの微弱電波を効率よく電力に変換することが可能となり、携帯電話基地局から環境に放射されたマイクロ波を、従来と比べて10倍以上の広さのエリア(携帯電話通信が可能なエリアの10%に相当)で電力変換でき、センサー電源としての活用が期待される。
 今後の展開
 将来的には、今回開発したナノワイヤバックワードダイオードを応用することで、5G通信における豊富な環境電波エネルギーを活用し、安定的にセンサーを駆動させるなど、構造物や建造物などのインフラのモニタリングに用いられるセンサーの電源フリー(バッテリーレス)化への貢献が期待できる。
 本研究グループは今後も、さらなるダイオードの高感度化とダイオードを集積するアンテナの最適化を行い、定電圧化のための電源制御を追加することにより、環境電波を利用した発電がどこでも可能になる技術の実現を目指す。
 ◆用語解説
 〇バックワードダイオード
 従来のショットキーバリアダイオードとは異なり、トンネル現象を利用して動作するダイオード。従来のダイオードでは十分な整流性が得られない小さな電圧領域においても優れた整流動作が可能。
 〇ナノワイヤ
 幅がナノメートル(nm)単位の極めて細いワイヤ状の半導体。エッチングなどのトップダウン加工ではなく、結晶成長によってボトムアップ形成ができる。
 〇ショットキーバリアダイオード
 金属と半導体の接合によって発現するショットキー障壁というエネルギーを整流作用に用いたダイオード。
 〇ゼロバイアス
 電圧がゼロであること。環境電波発電では、動作電圧の調整のために電力を消費できないため、ゼロバイアスでの動作が求められる。

 今日は朝から晴れ、雨の予想は!なし!。朝晩は少し寒さを感じるが、最高気温は26℃と夏日。
 早朝に畑に出かけた。梅田川の水位観測所を取り巻くように”アレチウリ”が繁茂している。花だけでなく、実も付いている。
 ”アレチウリ”は雌雄同株であるが、雌雄異花(雌花と雄花が別々)で、両者が見える。雄花は雌花より2~3倍程大きく、10個位集まる合弁花である。雌花序は淡緑色の雌花が球状に20個位密集している。花や葉は”ウリ”であるが、果実は小さく毛が密集し、これが沢山纏まっている。
 ウリ科のツル植物で1年生草本、北アメリカ原産の帰化植物である。繁殖力が旺盛であり、生態系に大きな影響を与える(他の植物を覆い、枯らす)特定外来生物に指定され、日本の侵略的外来種ワースト100(日本生態学会)に選定されている。
 因みに、クズ(葛、マメ科クズ属のつる性の多年草)は、根を用いて食材の葛粉や漢方薬が作られ、秋の七草の一つである。非常に繁殖力が強く、他の植物を覆ったり、巻きついたりして生長を妨げる。クズは、「世界の侵略的外来種ワースト100」に名前があがっている。
 アレチウリ(荒れ地瓜)
 ウリ科アレチウリ属
 雌雄同株であるが、雌雄異花(雌花と雄花が別々)
 つる性一年草
 北米原産の帰化植物
 開花時期は8月~10月
 両花とも球形に纏まった花序(かじょ、枝での花の配列状態)
 雄花は径1cm位、雌花は径3~4mm位
 果実1つは長さ1.5cm~2.0cm程で白い毛に覆われた小さな金平糖様