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ギ酸と重水を原料として重水素を選択的に作り分ける

2019-09-27 | 科学・技術
 大阪大学大学院工学研究科の森浩亮准教授、山下弘巳教授らの研究グループは、独自に開発した触媒を用いて、安価なギ酸(HCOOH)と重水(D2O)を原料とし、高価な重水素(D2およびHD)を選択的に作り分けて製造することに成功した(9月25日発表)。
 研究の背景
 水素(H2)は次世代のエネルギー資源として期待されている。その同位体化合物である重水素(D2およびHD)は、化学・生物学の実験研究用試薬として、また、半導体、光ファイバーなどの製造工程でも使用される高価な特殊ガスである。現状D2はD2Oの電気分解により、HDはH2とD2の接触同位体交換法(理論最大収率50%)によりそれぞれ合成されている。いずれもエネルギー多消費型のプロセスのため、市販品は極めて高価である。また、日本ではそのほとんどを海外からの輸入に頼っているため、触媒技術を用いた簡便な合成法が望まれていた。
 研究の内容
 ギ酸(HCOOH)は安価で安全(非可燃性、非爆発性、毒性が低い)な液体であり、かつ水素貯蔵密度が高いことから、次世代のエネルギーキャリアとして近年非常に注目されている。これまで当研究グループでは、塩基性シリカに数ナノメートルの大きさの微細なPdAg(パラジウム-銀)合金ナノ粒子を担持した触媒が、ギ酸を分解して水素を製造する優れた金属触媒となることを世界に先駆け報告してきた。今回、この触媒を重水(D2O)中でのギ酸分解に用いると、高価な重水素(D2)が高効率で生成することを発見した。さらに興味深いことに、表面の塩基性を変えるだけで、重水素(HD)を任意に作り分けることに成功した。特に、弱塩基性フェニルアミン基を修飾した触媒では、D2が87%の選択性が得られ、強塩基性トリエチルアミン基で修飾した触媒はHDの選択性が80%に達する。本研究成功の鍵は、固体(触媒)表面上でのH-D交換反応を塩基性の違いを利用して制御できた点にある。
 本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
 今回開発した触媒は、調製が極めて簡便である、安定性が高く分離・回収の容易な固体触媒である、塩基性を制御することで目的の重水素を任意に得られる、など実用化に不可欠な基盤要素を兼ね備えている。これにより、今後の世界的な需要拡大が予想される重水素の製造に対応できる低コスト製造法として期待される。また、今回発見した触媒反応は、特定の条件では量子トンネル効果に支配されていることを、速度論的な解析および理論計算を用いて証明しており学術的な意義も極めて高いものである。
 研究者のコメント
 高価な重水素の作り分けにおける触媒の開発は未開拓領域ですが、本研究で開発した新規触媒は実用化に不可欠な要素を含んでいるため、産業界における今後の発展の基盤技術に成り得ます。一方でその発現機構の完全解明と、量子トンネル効果の関与という学術的にも重要な知見を得るに至っています。したがって、産学の両研究者に興味を持っていただければ幸いです。
 ◆用語解説
 〇ギ酸(HCOOH)
 化学式でHCOOHからなる、無毒・爆発性のない液体である。工業的には酢酸生産時の副生成物として産され安価である。最近ではCO2とH2から合成する技術も開発され、水素を効率よく貯蔵・輸送できる物質「再生可能な水素キャリア」として注目されている。
 〇重水(D2O)
 水素の同位体である重水素(2H Deuterium)2つと質量数16の酸素によりなる水である。D2Oは通常の水(H2O)よりも電気分解の速度が遅いという性質の違いを利用して、重水をわずかに含む天然の水から濃縮、分離して得られる。
 〇同位体化合物
 同一原子番号を持つものの、中性子数が異なる核種の関係をいう。
 水素の同位体としては、重水素(2H Deuterium)、三重水素(3H Tritium)がある。
 〇PdAg(パラジウム-銀)合金ナノ粒子担持触媒
 特定の化学反応を促進させる物質。この場合、PdとAgの2つの元素からなる数ナノメートルの粒子が触媒の活性点であり、塩基性シリカ上に高分散で担持(固定化)されている。
 〇量子トンネル効果
 一般的な化学反応は、反応物が活性化障壁(化学反応を起こすために必要なエネルギー)を乗り越え進行する。そのため、高温ほど速く、低温では遅くなる。しかし、水素(H)など質量の小さい粒子の場合には、物質の波動性が顕著になり、エネルギーが無くても活性化障壁を透過することで化学反応が進む場合がある。

 朝から雲少ない晴れ。お日様が昇るとグングンと気温が上昇。最高気温は25℃程。
 敷地のコーナーに”ハナゾノツクバネウツギ”が植えられている。お花は最盛期を過ぎたのかな、少し減ってきた。近づくと少し甘い香りがする。
 名(ハナゾノツクバネウツギ)の由来は、花の残った5枚の咢の形が”羽根衝きの羽根”に似ており、木の姿が”空木(うつぎ)”に似ていることから。衝羽根(つくばね)とは正月に遊ぶ羽根つきの羽である。これを、”アベリア”と呼ぶことがある。”アベリア”とは、スイカズラ科ツクバネウツギ属の属名(ラテン名)であり、特定の種の事ではない。この園芸種(ツクバネウツギ属の常緑低木の交配種:Abelia × grandiflora)が多用され、学名も和名も長いので、短い”アベリア”が使われるようだ。
 ハナゾノツクバネウツギ(花園衝羽根空木)
 別名:アベリア
 学名:Abelia×grandiflora(アベリア・グランディフロラ)
   幾つかのアベリア属の交配から作られた園芸種
 スイカズラ科ツクバネウツギ属
 常緑性の低木(寒冷地では落葉)
 開花時期は6月~11月(開花時期が長いのが特徴)
 花は小さいロート状(径2cm位)
 花色は白やピンク
 花の様に見える咢(がく)は薄紅色