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カドミウム光格子時計の魔法波長を決定、室温で超高精度・小型・可搬型光格子時計の実現に道筋

2019-09-22 | 科学・技術
 理化学研究所開拓研究本部香取量子計測研究室の山口敦史研究員、香取秀俊主任研究員(東京大学大学院工学系研究科教授)らの国際共同研究グループは、カドミウム原子を用いた「光格子時計」の「魔法波長」を実験的に決定した。本研究は、米国の科学雑誌「Physical Review Letters」の掲載に先立ち、オンライン版(2019年9月13日付け)に掲載。
 国際共同研究グループは、カドミウム原子を光格子に捕獲し、光格子レーザーによる光シフトを精密に測定した。その結果、光シフトがゼロになる光格子レーザーの波長(魔法波長)を、419.88±0.14ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)と決定した。さらに、この結果をもとに、カドミウム光格子時計の黒体放射シフトを理論的に見積もったところ、既に実現されているストロンチウム原子やイッテルビウム原子の光格子時計と比べて、室温で1桁程度小さいことが分かった。これにより、カドミウム光格子時計が、室温で18桁の精度を持つ小型・可搬型光格子時計を実現する有力な候補であることが明らかになった。
 研究手法と成果
 カドミウム原子の魔法波長を決定するためには、光シフトを測定し、それがゼロとなる光格子レーザーの波長を探す。そのためには、まずレーザー冷却によりカドミウム原子の熱運動を小さくし、光格子に捕獲する必要がある。研究チームは、そのために開発した深紫外波長のレーザー冷却光源を使い、カドミウム原子の熱運動を、温度に換算して6マイクロケルビン(μK、1μKは100万分の1ケルビン)にまで小さくした。
 次に、こうして熱運動を小さくしたカドミウム原子を光格子に捕獲し、光シフトを調べた。光格子レーザーの波長が魔法波長になると、その強度が変わっても、原子が吸収する光の周波数は変わらなくなる。実験でそのような波長を調べ、魔法波長を419.88±0.14ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)と決定した。さらに、理論的にも魔法波長を計算し、420.1±0.7nmという実験結果と矛盾しない結果を得た。
 以上の実験結果に基づいて、カドミウム光格子時計の黒体放射シフトを理論的に計算した結果、ストロンチウム原子やイッテルビウム原子の光格子時計の黒体放射シフトより1桁小さいことが確認された。これは、室温付近で温度が0.1度ゆらいでも、時計の精度が19桁目でしかゆらがないことを意味する。これにより、室温で18桁の精度を持つ原子時計として、カドミウム光格子時計が有力な候補であることを明らかにした。
 ◆用語の説明
 〇時計の精度
 時計の精度は、ある時間経過した後の時間のずれで評価する。例えば、一般的によく使われているクオーツ時計の月差は約10秒で、10秒/2,600,000秒(ひと月)から計算されるおよそ4X10^(-6)が時計の精度になる。この値の指数の数字を取って、6桁の精度の時計という。18桁精度は、1X10^18秒(およそ300億年)経過すると1秒ずれる精度で、宇宙誕生から現在まで(138億年)の約2倍の年月が経って、ようやく1秒ずれる精度になる。
 〇光シフト
 原子は、電場の中では吸収する光の周波数が変化する。これを光シフトという。光格子に閉じ込められている原子も、光格子の電場の影響で光シフトが生じる。光格子の光シフトは、光の電場によって誘起された原子の電気双極子と電場との相互作用であり、シフト量は(原則として)光の強度に比例する。
 〇黒体放射シフト
 原子の周辺環境から放射される電磁波(黒体放射)により引き起こされる光シフト。ここで、黒体放射とは黒体が放出する熱放射。黒体とは、外部から入射する電磁波をあらゆる波長にわたって完全に吸収し、また熱放射できる(理想的な)物体。現実の物質表面からの放射は、電磁波の反射や透過の効果により、同じ温度の黒体からの放射より弱くなる。黒体放射のスペクトルは、黒体の温度だけで定まり、プランクの放射式によって理論的に与えられる。室温ではそのピーク波長は約17マイクロメートル(μm、1μmは100万分の1メートル)である。黒体放射のエネルギー密度は、シュテファン=ボルツマンの法則に従い、絶対温度の4乗に比例して増大する。原子の周辺環境の温度がゆらぐと、黒体放射シフトもゆらぐため、原子時計の精度を劣化させる。このゆらぎを抑えるためには、原子の周辺環境の温度を下げる(もしくは精密に測定する)か、そもそも黒体放射シフトが小さい原子を使う。カドミウム光格子時計は後者に該当する。
 〇ストロンチウム原子やイッテルビウム原子の光格子時計
 光格子時計に用いる原子の有力候補として、ストロンチウム原子とイッテルビウム原子の光格子時計の研究が、多くの研究開発機関で行われている。どちらも、フランスの国際度量衡局で開催されたメートル条約関連会議において、新しい秒の定義の候補である「秒の二次表現」に採択されている。
 〇相対論測地学
 「重力が強いところでは、時間がゆっくり進む」というアインシュタインの相対論の効果を、精密な原子時計で検出し測地に応用する技術。例えば、地上で異なる高さに置かれた2台の時計を比較すると、1センチメートル低い位置にある時計は、地球重力の影響で、1.1X10^(-18)だけ時間の遅れが生じる。つまり、1X10^(-18)の精度の2台の時計比較は、1センチメートルの精度での標高差計測を可能にする。
 ◆時計の精度
 ぜんまい式     1日に10秒以内
 クオーツ時計    1年に20秒以内
 セシウム原子時計  3000万年に1秒以内(精度:1X10^(-15))
 光格子時計     160億年で1秒以内(精度:2X10^(-18))
 ◆1秒の長さ
 現在の1秒の定義は、「セシウム133の原子の基底状態の2つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の91億9263万1770倍の継続時間」である。
 原子時計は、原子が選択的に吸収する電磁波の周波数を基準に作られる時計である。現在、セシウム原子が吸収する電磁波の周波数を基準に作られた、精度およそ16桁の原子時計で定義されている。
 ◆光格子時計
 香取秀俊東京大学准教授(当時)が2001年に提案した方式。
 まず、「魔法波長」と呼ばれる特別な波長のレーザー光を干渉させて作った微小空間(光格子)に、レーザー冷却された原子を1つずつ捕獲し、原子同士の相互作用が起きないようにする。次に、これらの原子にレーザー光を当て、光を吸収する「原子の振り子」の振動数を精密に測定する。この光の振動を数えて、1秒の長さを決める。光格子全体には多数の原子を捕獲できるので、それらの「原子の振り子」の振動数を一度に測定して平均をとることで、短時間で時間を決めることができるというもの。
 ◆魔法波長
 原子に光が当たると、光の電場の影響で(原子の)電子状態のエネルギーが変化する。これを光シフトという。この光シフト量は、一般に、電子状態によって異なるため、2つの電子状態間の「原子の振り子」の振動数が変化する。ところが、特定の波長を選ぶと、2状態の光シフトを等しくし、光シフトしない「原子の振り子」の振動数を観測できる。このような、「原子の振り子」の振動数を変えない波長を魔法波長と呼ぶ。

 朝は曇り。今日の天気の予想は、午後から雨、最高気温は22℃。
 朝早くの散歩、塀に絡まり”ノアサガオ”のオーシャンブルーの花が咲いている。咲いているのは朝だけの1日花、昼ころには萎む・・アサガオ(朝顔)だから!。
 花色はオーシャンブルーなので、別名に”オーシャンブルー”とある。また、多年草なので”宿根アサガオ”、沖縄や南西諸島で良く見られるので”琉球アサガオ”とも呼ばれる。
 ノアサガオ (野朝顔)
 別名:オーシャンブルー、宿根アサガオ、琉球アサガオ
 英名:blue morning glory(青色の朝顔)
 ヒルガオ科イポメア属
 蔓性宿根多年草
 原産地は熱帯アジア
 開花時期は6月~11月
 花は朝顔に似る、花径8cm~10cm
 花色はオーシャンブルー(青紫色)、白・桃色もある
 ほとんど結実しない