最近ではあまりその例を見ないが、捕虜の交換は敵対する当事者同士ではよくあること。ただ、今回、シリア政府(アサド政府)が2130人の反政府勢力捕虜と、反政府軍が捕虜としていたイラン人48人との交換は、そのスキームと言い、規模と言い、極めて特殊と言えるだろう。シリア反政府軍が、アサド支援のためにシリアに潜入したとしてイラン人グループを拘束したのは昨年8月。一方、イラン政府は、48人は巡礼者であり、アサド支援ではないとしている。アサドが釈放した2130人の捕虜のほとんどはシリア人であり、女性や子供も含まれている。
この捕虜交換に関しては、反政府軍側からは、アサドがいかにイランの影響下にあるかの証明であるとして改めて非難するとともに、自らの兵士の釈放ではなく、イラン人の釈放に応じたことについて、自らの兵士を見放してさえいる、としている。
アサドがこの時期にこのような決断をしたことは、それだけイランへの依存が高まっているためだろう。また、多数の捕虜をかかえるという事は極めて大きな負担になっている。一方で、捕虜になっている政府軍兵士を保釈させても政府側に戻るとは期待できず、そのような交換はアサドにとってメリットがない。今や数少ない支援国のイランに少しでも恩を売りたいという考えも想像できる。
先日アサドが国民に向けて演説したのに続いての今回の動き、水面下で何かが動き出したのかもしれない。