回顧と展望

思いついたことや趣味の写真などを備忘録風に

レ・ミゼラブル

2013年01月29日 14時50分07秒 | 日記

映画の大ヒットもあってヴィクトル・ユゴーの世界的な名作レ・ミゼラブルが今ブームになっている。ミュージカルの世界ではたぶん歴史上最も成功したものの一つだろう。ポスターでは庭掃除の場面でのコゼットの顔がその象徴となっている。

そんなところで、ミュージカルが上演されはじめた少し後の1987年に発刊された鹿島茂著「「レ・ミゼラブル」百六景」が先日文春文庫から新装版として刊行されたので読んでみた。この本自体は挿絵をふんだんに盛り込んだ、いかにも肩の凝らないエンターテインメントであるけれども、それでも、改めて、この大河小説のもつ壮大なスケール、時代を映す構成、現代のフランスに対する精神的な影響などに思いを馳せるきっかけにはなった。

思えばこの本が単行本として発刊された当時、日本はバブル経済の真っただ中にあり、地価も株価も今から見ればとてつもなく高騰していた。日本がまだ将来について希望的な雰囲気にある中、「ミゼラブル(悲惨な人達)」というようなことは遠い国の遠い過去のことであり、実感を持っては想像できなかったのではないだろうか。それが今、日本も世界もかつてない格差社会になり、特に日本では生活保護世帯が史上最高を更新しているなかで、この世の中に生まれながらにして「悲惨な人達」が増えているのではないかと思うと、この小説の読み方もまたおのずから変わってくる。もちろん、ユゴーのこの小説は愛と寛容と理想主義の中に終結してはいるが。

かつてアンドレ・パスカル通りにあるOECD本部に呼ばれて毎週のようにパリに出張したことがある。その時定宿としていたホテルは凱旋門から伸びるヴィクトル・ユゴー通り102番地に在った。さすがは国葬でパリのパンテオンに葬られた人物、パリの主要道路の一つにその名前が残るとは、いかにユゴーがフランスにとって一作家を超えた国家的シンボルだったのかを改めて実感したものだ。

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