「甘くべとべとした菓子」
この、妙に写実的な表現は、今から20年前のギリシアの観光案内書に書かれてあったものだ。
バクラバスという彼の国の菓子を、そのような言葉で説明していた。
ギリシアのデザート菓子は、猛烈に甘いことで知られている。その甘さたるや、日本人には受け入れがたいほど甘い。
一口食べると血糖値が急上昇し、心臓は早鐘を打ち、
「みみみ水! 水をくでー!」
となること必定なのであります。
20年前のギリシア旅行で、筆者もそのお味を経験済みである。
しかし、なぜそんな昔の事柄がここに登場するのか。
それは、ブログ仲間のNoritanから海外出張の土産でいただいたこの缶詰、Halvaカカオの味が、まさにあのバクラバスのような甘さだったからなんであります。
開缶時はこのような様子であった。
この、表面を覆う液体は何だろうか。
パッケージの画像から、てっきりパウンドケーキのようなものを想像していたのだが、どうも違うらしい。
謎の液体からは、ココナッツのような素晴らしくいい香りが立ち昇ってくる。
かくのごとし。
思いもよらぬ、凄まじき光景となった。
見慣れたはずの台所が、何か病理解剖学的な雰囲気に包まれた。
大変なことになった。
さすがNoritanどの、これだけ珍しい缶詰をよく見つけてきてくれた。
どうしてこんな有様になったのかというと、柔らかいと思っていた缶の中身が意外にも固く、フォークでかりかりとやって皿に出したら、このような状態になったのだ。
眺めていると、次第に不安のような気持ちが増大してくる。
大変なことになった。
筆者は現実から逃避して、あの懐かしいギリシアに飛んだ。
白い家並みは20年前と少しも変わることがなく、陽光とエーゲ海からの風が筆者を清々しい思いにさせた。
(うそですけど)
このHalvaという缶詰はマケドニア共和国のもの。そしてマケドニア共和国というのは、ギリシアのすぐ北にある国なのだ。
国が違っても地域が近ければ、食文化には共通するものが多いこと、いうを待たない。
筆者は、ギリシアにいるつもりでhalvaを一口頬張ってみた。
綿菓子を押し固めたような食感で、べとべとして甘く、やはり猛烈な喉の渇きを覚えたのであった。
内容量:420g
原材料名:ゴマ、砂糖、カカオ、バニラフレーバー
原産国:マケドニア
追:NoritanがWikipediaでハルヴァを探してくれました。アラブの食文化らしいですぞ。