ロンドン市内にある老舗缶詰企業の社屋。残念ながら取材は出来ず
読者諸賢よ!
まさかのEU離脱で世界中を驚かせたイギリスは、実は缶詰発祥の国でもある。
食べものを容器に入れて密封&加熱殺菌という基礎原理はフランスで考案されたが(1804年)、そのとき使われた容器はガラス瓶だった。
きっと、手頃で丈夫なものがそれしかなかったのでありましょう。
それから6年後の1810年になって、イギリスでブリキを使った容器が発明された。これが今の缶詰の原型だ。
1812年には、ロンドンで世界初の缶詰工場が稼働している。何となれば、イギリスは缶詰発祥の国といえるんであります。
そんなロンドンでは、はたしてどんな種類の缶詰が作られ、売られているのか。
市井ではどんな風に食べられているのか。
それを取材に行ってきましたゾ。
まず向かったのはセインズベリーというスーパー。
高級店ではないが量販店でもないという位置付けらしく、日本でいえば東急ストアなど電鉄系のスーパーに近いクラスだと思う。
どーんと現れたのがベイクドビーンズのコーナー。
ベイクドビーンズは、直訳すれば「焼き豆」になるが、実際はトマトソースで柔らかく煮たもの。豆の種類はいんげん豆であります。
ベーシックな味付けは、トマトソース、塩、香辛料のほかに砂糖が加えてあるから、ちょっと甘い。
彼の地では、ベイクドビーンズをこんな風にして、おもに朝食に食べる。
バターをたっぷり塗ったトーストに目玉焼きを添え、熱々にあたためたベイクドビーンズをかけるのだ。
ここにソーセージなどを添えることも多く、家族でも食べるし、独身者も作って食べる。お店でも提供されている。
そんなベイクドビーンズにも様々なバリエーションがあった。
手前はソーセージ入り。左側のはチョリソー入りだそうな。ほかに有機栽培で育てられた豆を使ったものもあった。
こちらはハーヴェイ・ニコルズという百貨店で見つけた高級品。800g入りで5ポンド20ペンスである。
(1ポンド139円で計算すると約723円)
さっきのソーセージ入りは約半量の390g入りで75ペンス。セインズベリーのPB商品も420g入りで35ペンスである。
ハーヴェイ・ニコルズのものはそれらの3倍〜7倍という価格であります。
まあ、日本でいえばサバ缶も100円台から700円台まであるから、同じことかも知れない。
再びセインズベリーに戻って...これはパスタ缶コーナー。
パスタソース缶ではない。スパゲッティにマカロニ、ラビオリなど、ちゃんと味付けをして調理されたパスタが入っている缶詰である。
これだけ様々な味付けで大量に展開しているのだから、売れているということでありましょう。
でも、僕は知っている。この缶の中に入ったパスタはすっかりふやけ、ふにゃふにゃ食感なのだ。
昼食を摂るためにぶらぶらと歩いていくと、工場跡地があった。
いつ閉鎖されたのかは知らぬが、今ではアーティストたちが住み着き、ギャラリーや工房として活用されている。
木戸や窓枠は塗り直してきれいにしてある。広場には屋台も出ていて、近所の人が寛ぐスペースにもなっている。
夜になればライブも行われるようだ。
こうして自然と人が集まり、時間を掛けて作り上げられたものには文化がある。
こんなスペースでいつか、缶詰イベントをやりたいと思った。
続く!