閑寂肆独白

ひまでさびしい本屋のひとりごと

新知見

2016-03-01 07:37:34 | 日記
以前から「カルタ」に関して追いかけていることは書いたと思う。先ほど「中国製紙技術史」をさる図書館から借りてざっと目を通したのだけれど、結構面白い本でした。一番大事なことは、和紙に関するこれまでに目を通した本には 和紙の性能を劇的に変えたのに「ネリ」の発見であった、と書かれているように思う。これが中国からの伝播であるとはっきり書いた本はなかったのではないか。しかしこの本にははっきりとトロロアオイ他 いくつかの漂浮剤・「紙薬」と呼ばれる、が、宋か元の時代には使われていた現物と書かれた記録があるという。和紙が奈良朝以来の技術から飛躍するのは平安末期と文禄の朝鮮役のあとだけれど「ネリ」の導入はこの中間期か? いずれにしても日本独自の発見ではないことは明らかだろう。中国は広くて製紙の材料も雑多。ことに麻・羊毛は日本とは比べ物にならないくらいたくさんあり、南の方は竹が豊富。日本では山の木々が豊富という風土の違いで当然原料が違ってくる。楮や三椏などの樹皮を原料とするのは中国では主流ではないので日本にもたらされる「唐紙」もそうであっただろう。中国の紙で、樹皮原料の紙の製法が日本に伝わったのは少し時間がたってからというのは不思議ではない。 自分たちのことを美化するのは気持ちはわからないではないが「学術」の世界で我田引水は困る。  この本は共産中国で書かれたもので、毛沢東マルクス主義が基調であることはやむを得ない。でも面白い記述があった。「過去において封建統治階級は、本来働く人たちの集団による科学技術上の発明・創造を、ある帝王や将軍・大臣に帰し、人民の創造的な働きを抹殺する。」「働く民衆の集団による発明を、すべてある一人の「智者」に帰し、唯心主義的英雄史観を鼓舞している」的確な指摘ですね。 今の日本の 様子や如何! 考えさせられませんか。
コメント
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