閑寂肆独白

ひまでさびしい本屋のひとりごと

またしても 小説の話。

2019-05-12 09:05:05 | 日記

 普段は主に「歴史」にかかわるいろいろな本を「読む」というより「目を通す」ことが多いということを全回も書いた。まあ時々違ったものを読みたくなることもあり、です。しかし新刊を求めることはなく入手した物の中から目についたものを手にすることになります。この度買い受けた新品同様の文庫。池波正太郎や松本清張などに交じって「活版印刷三日月堂」という4冊揃があって、活版印刷に愛着を持つ小生としては読んでみよう、ということになりました。読んで「良かった」。良い作品だと思います。活版印刷の蘊蓄もあまりくどくなく(興味のない人にとっては如何かわからないですが)メインテーマ?をめぐっての舞台回し、印刷物・印刷屋をめぐっての登場人物の配置も素敵。配慮の行き届いた感じで、上手だなあと思った次第。それぞれの性格や状況・環境もよくかけていると思うし、16話も繋いでいく構成、良くいろいろと思いついたものだと感心しました。 小説を書くのに一人称のもの、複数称のもの、あるけれど、登場人物それぞれをかき分けるのはなかなか難しいと思う。文庫版4冊を足掛け6日、実質7時間くらいで読み終わった。次の章を「読みたい」と思わせる作品でした。
 活版印刷は小生も好きで、少し厚めのざらざら感のある紙で活字のへこみがわかるのは字を刻み込んだ感があってよろしい。上記の本には活版と悟られないように平滑に刷るのが「技術」だと先代経営者は言っていたとあったけれど、小生はそうは思わない、伝票などは手触り感は不要であろうけれど、作品である「本」は手触りも必要ではないだろうか。今の印刷はつるっとした感触で「字を刻む」感がない、しかもそれしか印刷の手段がなくなってしまったというのはやはり良くない。第一書房の本など今にして思えば売らずに取っておけばよかったと思う。谷崎の単行本は手元に残すようにしていている。ベストセラーだった棟方志功の装丁の本は結構あるのでよほど状態の良いもの以外は手放すけれど。ARSの本も捨てがたいけれど全体に造本がいい加減のものが多くまた紙質もあって埃を吸って汚れたものがかなりあって保存する気にならないものが多いのは残念。
コメント
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