2021.9.9(木)曇り
本書の中にも疑問に感じる部分がいくつかある。例えば、「ヒトの通年生殖がガンを産んだ」(第1章ー病気と進化)男子が一回に射精する精子が2億匹といわれ、おびただしい細胞分裂がなされる。分裂のたびにいくつかの異常がおきてそれがガン発生の原因というのは定説だが、それだとガンは男性に圧倒的ということとなる。卵子の場合はそう分裂回数は多くないだろうからだ。氏はその証拠としてチンパンジーとヒトの遺伝子の違いを出しておられる。ヒトとチンパンジーとでもっとも違っている遺伝子を50個とりあげて比べたら、50個のうち11個の遺伝子が精子を作り出す遺伝子だったという。発情期のあるチンパンジーと通年生殖のヒトの違いがこういうことになるのだろうが、そのことがガンが多くなったことの証拠となるのだろうか。ヒトも年一回の発情期だけにセックスしていればガンは少なかったかもしれないが、地球上の王者として君臨することはなかっただろうし、とっくに絶滅していたかもしれない。
老化、病気、遺伝子、死、進化に関する本。他に図書館で借りた本、雑誌やパンフレット、新聞記事など読むがなかなか理解納得出来ない。「生を明らめ死を明らむるは、」むずかしい。
遺伝子については遺伝情報の乗っていないイントロンについて、「いわば意味の無い配列で、ゲノムDNAにはこのように要らない配列がはさまっているが、なぜこんなことになっているのかはよくわかっていない」と書かれている。これはジャンクとまでいわれたいわゆる非コード領域DNAのことと理解しているのだが、近年多くの発見がなされ、要らないどころか大変重要な役割を果たしていることがわかってきている。新しい本なのに(2017年刊)変だなあと思っていたら、続いて遺伝子発現の時期と量を決めていることと(一体何のことか解らないのだが、、)mRNAがたんぱく質を造る際に多様な蛋白を造ることに働いているという事が書かれている。共によくわからない事なのだが、この非コード領域DNAは多様性と変異の有用性という意味において、進化に多大の貢献をしていると考えるのである。我々はこの無意味と言われたゲノムDNAのおかげで人類として存在し、絶滅することなく今日を迎えているのだろう。
さて話が横にそれたが、老化とは何かというところでテロメア、酸化、変異蓄積、サーチュイン遺伝子、早期老化遺伝子様々な要素を説明されている。どれももっともらしい説で、あらゆる薬品やサプリメントが出現しているのだが、完全に納得出来るものは無い様だ。氏はほとんど全ての著者たち同様、老化は避けて通れないものとされている。
では老化と寿命の関係はどうなのだろう。ヒトの寿命の要因としてテロメア、酸化、免疫、サーチュイン、分子修復、再生、性格(心理的因)を挙げておられる。
桶の側板がそれらの要素であり、その長さがヒトの極限寿命120歳とすれば、桶に水を入れたときに短い側板が一つでもあればそこまでで水は漏れてしまう、それが寿命だという説明はわかりやすい。これはよくビタミンや栄養のあり方などに使われる手法だ。では老化との関係はというと、これらの要因全てが(性格は?だが)老化と関係しているので老化の先に死があるという従来の考え方に合致している。
これらの従来の考え方に真っ向から反している説がある。「LIFE SPAN」(2021.1.27参照)である。実は今3度目の読書中である。なかなか理解しにくいのだが、少しは解ってきた様だ。おわり
【今日の”のびちゃん”】NO. 57
暑いのとコロナでどこも連れて行けなかったのだが、府内ならいいかと10日に天橋立に連れて行く。凄く喜んでお出かけは嬉しいみたいだ。
橋立と成相山の展望台。