「80歳まだ走れる」 2025.1.10 雪
リチャード・アスクウィズ著 青土社 新刊2860円
久々に感動的な本を読んだ。読売新聞の書評欄で為末大さんの評を見つけて早速に買ったのだが、それはこのタイトルに魅されて買ったものだ。それはわたし自身が高齢になっても(もうなっているのだが、、)アスリートを続けようと決めているだからかもしれない。原題は「The Race Against Time:Adventures in Late-Life Running」でややニュアンスが違うようだ。80代のランナーについては第3章に多く書かれているが、それは本書の主題ではない。著者が80歳以降も走り続けようと考えていることもあるが、やはり80歳は一つの壁でもあり目標でもありえるからだろう。あるいは40~70代の現役を終えたアスリートにもう一度夢を与えようとつけられたタイトルかもしれない。70代前半のわたしが感銘を受け、勇気と夢を授けられたのは、著者と同様に現役から長い時間が過ぎ(わたしの場合20年余り)また走ってみようと始めたトレイルランとそのトレーニングに高齢者のリスクとハンディをいやというほど思い知らされたからだ。
本書の中身は陸上のマスターズを中心としたオールドランナーについての話だが、思想的、哲学的な分野でも感銘を受ける。それは老化、その先にある死についても考えなければならない世代だからだ。一般の老人なら悲観的になるのだが、彼らはずいぶんと明るい、本書の帯紙の言葉が素晴らしい。
「人はあっという間に老いてしまう。でもそれを決めるのは自分自身。だから、年齢に屈してはならないの。自分の身体なんだから、自分で大切にしないと。前を向いて、やるしかない。頭も心も、強くしなければ。年齢なんか、置いてけぼりにしてやるのよ。」105歳の短距離走者の言葉である。
老化についても最新の情報が記されているが、とりわけ重要なトレーニングについても最新のトレーニング方法などに多くのページが割かれている。年を取ってからカムバックしたわたしがぶつかった困難は、予想以上に体力が落ちていること、簡単に故障してしまうことだ。若い時と同様のトレーニングをしていたらあっという間につぶれてしまう。それと意外なことにトレーニングにさける時間は随分と少なくなっていることだ。そこで短時間に効果をあげられる、インターバルトレーニング、筋トレ、SSC(ストレッチ・ショートニング・サイクル)などを見よう見まねで始めて来た。それが本書では高齢者のトレーニングとしては最適であると推奨されていたのには驚いた。動機は違うのだが、自分のやっていこうとすることが正しかったのだととてもうれしくなった。
「プライオメトリック・トレーニング」NAP
プライオメトリック・トレーニングを本格的に始めようと本を買って勉強しているが、高齢者にとっては諸刃の刃だろう。よほど注意してかからないと、故障の原因となるだろう。救世主となるか悪魔となるかどこかで聞いたような、、、。
いずれにしても高齢者のトレーニングについて本書の内容は参考になる。そして単純なことであるがコツコツと継続して続けることだ。
本書の中には多くの高齢者ランナーが登場する。それらの人々の人生が語られているのだが、押なべて苦労を重ねている選手が紹介されている。貧困、差別、病気、家庭の不幸などを乗り越えて走り続けているいるのだ。例外なく前向きで、夢があり、楽しくてしょうがないという姿に共感を覚える。スポーツ、運動、競技というのはそういうものなのだ。
周囲のものからは「年寄りの冷や水」といわれるアスリートが、実は最高に人生を楽しんでいる遊び人なのだ。
「歳をとるから遊ばなくなるのではなく、遊ばなくなるから歳をとるのだ」カール・グルース
M75 走ってみようかな。