2017.1.30(月)雨
本書を読む前、「アウシュヴィッツの図書係」の記事の中に本書に対する書評について書いている。(2016.10.5参照)
「たとえば、ユダヤ人大量殺りくに先立ち、約20万人の障害者が殺されたが、彼らに致死薬を注射したのは看護師たちだった。ホロコーストの最初の下手人は女性だったのだ。」もちろん彼女たちが断罪されることはなかった。「被告たちは、よく知らなかった、自分たちに決定権がなかったなかったと弁明し、周囲に影響されやすい「無垢な」女性という、古くさい仮面で身を守った。」と辛辣な批判を浴びせ、「彼女たちもさまざまな度合いと意味合いで権力を行使し、虐殺に関与した」と結論づけている。「職務やキャリアアップには熱心だが、他者への共感には乏しいのが彼女たちの一般的な傾向だ。」と辛辣である。
とにかく書評しか読んでないので本物を読んでみたい気持だ。
昨年9月に掲載された本書の書評
もうひとつ偶然が重なった。先に書いた文中に障害者殺害の件があったが、実は一体何のことか分からなかった。その事件の真相を知らせるドキュメントがEテレであったのだ。
ETV特集 それはホロコーストの“リハーサル”だった
明らかになる障害者の虐殺の真相 ナチスが利用した「衛生思想」現代への警鐘とはという衝撃的な特集だった。
ナチスが台頭するより以前に、ドイツの精神病院や障害者施設で秘密裏に障害者(ママ)が殺されていたのである。それは一種の優生思想が元になっていたようだが、ナチスの時代になるとより拡大され、20万人の障害者などが殺害された。そこには非生産者とされたてんかんやノイローゼ、うつ病の患者も含まれたというから凄まじい。結局は宗教者等の反対運動に押されて中止を余儀なくされるのだが、ヒトラーはその矛先をユダヤ人に向けることとなる。恐ろしいことはこの障害者虐殺の際に収容所、ガス室、屍体焼却場の設備が確立されており、そのままユダヤ人虐殺に使用されたということだ。この番組が「ヒトラーの娘たち」を意識していたか否かは解らないが、虐殺に直接手を下した看護婦にインタビューした文書が残っている。「わたしは悪いことはしたことがない、誠実に職務を遂行した」という旨の答をしていた。罪の意識とか反省の姿勢は微塵もない。これは徹底的なプロパガンダによるものと結論づけているが、「ヒトラーの娘たち」では彼女たちに強烈な批判を向けているようだ。戦争という巨大な狂気の下で末端の女性たちがどのような心理や思想で生き抜いたのか、とにかく「ヒトラーの娘たち」を読んでみなければという気持である。
今読み終わって、また違った想いを抱いている。それは相模原市の「津久井やまゆり園」の障害者19名の殺害事件である。奇しくも今月26日は事件から半年で、新聞などで多くの論評などが報道されている。一人の異常者の起こした特異な事件という見方が一般的だと思うのだが、実はそうでもないようだ。容疑者が「重度障害者は生きていてもしょうがないから安楽死させた方がいい」という驚愕の発言をした。とんでもない事だと思いきや、この発言を肯定する若者がかなりいることがわかってきた。ネットで流れているそうでわたしには確認できないのだが、先月のEテレ「バリバラ」という番組で視聴者の意見を紹介していた中で肯定するものがいくつかあった。この番組を観て、意見を出そうというのはしごく真面目な人物であって、ふざけ半分で回答している訳では無い。番組にも登場し、意見を交わしている。「生産性のないものは世の中の役に立たないのだから、殺されても仕方が無い」という考えを堂々と交わしているのである。中には障がい者が肯定いている者まであって驚きを禁じ得ない。
戦前のドイツの情況に実に一致していて恐ろしいものを感じるのだが、なぜこのような考え方が広まるのだろうか。つづく
津久井やまゆり園の事件から半年
【今日のじょん】じょんじょん面白写真
かみさんがピアノを弾き始めるとサークルから出てきて椅子の下をくぐり抜けるのだ、へんだねえ。