2016.8.30(火)晴れ
7月26日のダリ展(京都市美術館)に続いて文化博物館のダリ版画展に行く。四条から三条までの東洞院通りは30数年前中京郵便局に通った懐かしい道である。しかし懐かしさよりよそよそしさを感じるのは何なのだろう。外与さんとか御射山公園とか区役所(改装工事中のようだが)とか六角の自転車屋さんとか昔のままで残っているのだけど、その他は妙におしゃれでよそよそしい建物に変わってしまった。中京郵便局は改築したてのところで仕事していたので、新しいイメージが残っているのだが、さすがに40年近く経っていれば、外装だけでなく内装までレトロな感じが漂ってきた。
六角の自転車屋さん、中京郵便局、文化博物館
さて肝心のダリ版画展だがダンテの「神曲」挿絵の版画100点の他に120点あまりの版画やブロンズ作品など実に充実した展示である。
ダリの作品のモチーフに引き出しや螺旋があり、ニュートンやアインシュタインなどの理化学的な分野にも傾倒していることが判る。有名な柔らかい時計などは明らかに相対性理論の影響だろう。しかし最も多く使われているだろうあのY字形のつっかえ棒だけは一体何を意味するのかわからなかった。いろんな物を支えているだけでなく人体の手足や頭部などを支えてもいる。
実はあれは松葉杖だったのだ。少年期に物置の隅に見つけた松葉杖に惹かれたというふうに書かれていた。何と妙なものに惹かれたものだ。それが死と再生の象徴とも書かれている。なんで松葉杖が死と再生の象徴なのかわたしには分からない。しかしそれは性的不能を表すというのは理解できる。性的不能な男性器を支えているのだ。ダリが性的不能であったかどうかは知らない。だけど性欲はありながら不能であるというパラドックスをあの奇妙な形のつっかえ棒が表しているとすればそれはよく理解できるのである。
「毛皮を着たヴィーナス」はもちろんであるが、他の作品にも性的倒錯の匂いを感じるのはわたしだけだろうか。