収入を高めるためにはどうしたらいいのか。経営コンサルタントの小宮一慶さんは「稼ぐ人の共通点は、思考力と実行力があり、せっかちな性格だということ。逆に、稼げない人はのんびり派で1つの仕事にたっぷりと時間をかけ、仕事に取りかかるまでが遅い。『お金に稼がせよう』などと調子のいいことを言う人もまず稼げません」と断言する――。
※本稿は、小宮一慶『新時代の堅実なお金の増やし方』(ぱる出版)の一部を再編集したものです。
賃金格差はますます拡大する
現在、賃金格差が拡がっていますが、この傾向は今後も間違いなく続きます。最低賃金で働く人がいる一方で、年収が何億円、何十億円という経営者がこれから増えてくるからです。
これにともない、1つの企業内でも賃金格差が拡大します。年収1億円以上の経営陣と、年収400万円で定年まで働く社員という格差です。
経営者の賃金が上がるのは、優れた経営者を雇うためです。年収を上げないと、優秀な経営者を雇うことができず、優秀な経営者がいない企業は競争に勝てません。会社全体の成績は経営者で決まるからです。競争に勝てない企業は衰退の一途をたどることになります。
こうした事態を避けるために、優秀な経営者の奪い合いが始まりつつあり、その結果、経営者全体の賃金が高額化することは、ほぼ間違いないと私は考えています。
日本の大企業の経営者や役員の現在の年収は、世界的に見ればそれほど高くなく、これからグローバルスタンダードに合わせて上がっていきます。
現在は、年収10億円以上もらっている経営者のほとんどは外国人ですが、これからは日本人経営者でも年収10億円以上もらう人が出てくるでしょう。それで優秀な若い人たちが日本の大企業の経営者になりたいと思うようになり、日本企業が良くなるのなら安いものです。
現在、一番得をしているのは、儲かっている中小企業の経営者で、なかには業績の良い会社を経営し、年収1億円以上の経営者を私は何人も知っています。こうした事実は、あまり知られていないのかもしれませんが、中小企業の経営者が1億円もらっているのであれば、大企業の経営者が10億円以上もらっても何らおかしくはないでしょう。
以前は、大企業に新入社員として入社し、出世競争を勝ち抜いた人だけが大企業の経営者になれましたが、今はこうした生え抜きの経営者だけでなく、プロの経営者が経営を任される時代になりつつあります。
お金をガンガン稼ぎたいなら、経営者を目指すのも選択肢の1つです。
そのためには、まずは社内で通用する人材になること。社内で通用しない人が、社外で通用することはありません。
企業にとって一番有難い社員は、他社に転職すると給料が上がるけれども、「この会社が好きだから」といった理由で転職しない人です。逆に、他社に転職すると給料が下がるような人は、現在の会社でもいらないと思われている可能性が高いでしょう。
「中小企業は給料が安い」と言われています。全般的には確かにその通りだと思いますが、中小企業のなかにも給料の高い企業はあります。
逆に、「大企業は給料が高い」と言われますが、生産性の低い大企業は給料が年々安くなっています。中小企業のなかでも、大企業のなかでも、二極化が進み、今後も賃金格差が拡大していくことになります。
稼ぎたい人は、「大企業か、中小企業か」で就職や転職を考えるのではなく、「稼いでいる企業かどうか」そして、「自分が活躍できるかどうか」で判断することが何よりも大事になります。
お金を稼ぐ人の共通点
稼ぐ人は、思考力と実行力がある人ですが、もう1つ共通してもっている特性を挙げるなら、みなせっかちだということです。私の知る限り、のんびりした性格の人で、お金を稼いでいる人はあまりいません。
生まれもってお金持ちという人のなかには、のんびりしている人もいるかもしれませんが、稼いでお金持ちになった人は、せっかちな人が大半でしょう。
せっかちな人は、せっかちなだけに時間管理が上手で、時間当たりの生産性が他人よりも何倍も高い傾向があります。時間は誰にも平等に与えられていて、1日は24時間と決まっています。ですから、その24時間の使い方で稼げるか、稼げないか、明暗が分かれるのです。
「タイムイズマネー」「時は金なり」と昔から言いますが、まさしくその通りで、平等に与えられた時間をどう活用できるか、時間当たりの生産性をいかに上げられるかで稼ぎが決まります。
最初から割のいい稼げる仕事ばかりがくるなどという都合の良いことは絶対にありません。割りの悪い仕事が回ってきたときに、いかに自分なりに工夫をして、自分の時間当たりの生産性を上げるかが大事になります。割りの悪い仕事がきたときこそ、稼ぐ力を向上させるチャンスなのです。また、それ以外の「to do」もできるだけ早くこなすことです。
それほど稼げない仕事を8時間でやる人、6時間でやる人、4時間でやる人がいます。
8時間でやる人に比べて、6時間でやる人には2時間、4時間でやる人には4時間、別の仕事、あるいは別の何かをする時間が生まれます。
「人は与えられた時間で、すべてのことをする」と言われていますが、与えられた時間を全部、ある仕事に使っていたら他人と同じか、他人以下の稼ぎにしかなりません。
仕事の時間を自分が決め、その時間内に仕事をやり終え、残りの時間をどう使うのか。仕事以外の時間も含めて、どのように時間を使っていくのかが問われるのです。私の人生の師匠(曹洞宗の僧侶・藤本幸邦さん)がおっしゃっていたように「お金も時間も使うもの」ですが、上手に使いたいものですね。
そして、仕事の評価は、アウトプットの量と質で決まります。それらを高められたら、次により難しい、つまり、より稼げる可能性のある、少なくともより評価の上がる仕事がきます。ここがポイントです。割りの悪い仕事であっても、良いアウトプットを続けていれば、割の良い仕事が回ってくる好循環に変わるのです。
「お金に稼がせよう」
こんな調子のいいことを言っている人もいますが、こうした人はまず稼げません。お金に稼がせることを考える前に、まず自分が稼ぐことを真剣に考えるべきなのではないでしょうか。
お金を稼げない人の共通点
一番良いのは、外見からはせっかちに見えないけれども、内心はせっかちという人でしょうか。しかし、私の周りは、せっかちが外見からにじみ出ている人たちばかりです。
裏を返せば、稼げない人というのは、せっかちではない人。せっかちではないがゆえに、1つの仕事にたっぷりと時間をかけてしまいます。だから時間当たりの生産性が上がりません。
また、1つの仕事に時間がかかってしまう人を見ていると、その仕事に取りかかるまでが遅いという共通点があります。新しい仕事に取りかかる前に、何か余計なことを考えているのか、何も考えていないのかは分かりませんが、とにかくすぐに仕事に取りかかろうとしません。スタートが遅ければ、ゴールが遅くなるのは必然でしょう。
そして、仕事が遅いと次の仕事がこなくなります。「仕事は、仕事ができる人、仕事が早い人にやってもらえ」とよく言いますよね。
忙しい人は、忙しいなかでも独自の工夫をして、何とか締め切り期日までにその仕事を終わらせようとします。だから、さらに仕事が早くなり、こなせる仕事の絶対量が増えていき、人からの評価が高まり、仕事ができる、稼げる人になります。経験値も当然それだけ早く増えます。
仕事ができれば出世できますし、出世できれば給料も上がり稼ぎが増えます。出世すると、部下も増えますから、チームとしての仕事のアウトプット量を個人のときよりも何倍にも増やすことができます。なおかつ、自分にしかできない仕事に専念できます。自分で全部やらなければならない人に比べて、圧倒的に稼げるわけです。こうした稼げる好循環に入れるかどうかも大事なことです。
---------- 小宮 一慶(こみや・かずよし) 小宮コンサルタンツ会長CEO 京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学、東京銀行などを経て独立。『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座2020年版』など著書多数。 ----------