12月30日の大納会まで、2021年の株式市場は残すところ2週間弱となった。9月14日に31年ぶり高値となる3万0795円まで上昇した日経平均株価だが、その後は上値が重い展開が続き、11月末には南アフリカで発生した新型コロナウイルスの新たな変異株への警戒感から2万7000円台まで調整した。
マーケットはその後やや落ち着きを取り戻しているものの、アメリカでのインフレ懸念の高まりによる利上げ前倒し観測、中国の景気減速や恒大集団の債務不履行問題、半導体不足や資源価格高騰など、外部環境は不透明な状態が続いている。
31年ぶりの高値更新に高まる期待
しかし、このような状況下でも日本企業の業績は着実に前進中だ。『会社四季報』2022年1集(新春号)の今2021年度(2021年12月期~2022年3月期が対象)の業績予想を集計したところ、前期比の経常増益率は32.1%となった。来2022年度(2022年12月期~2023年3月期が対象)は同7.6%と、連続で経常増益となる見通しだ。
アメリカ株に比べて日本株のPER(株価収益率)水準は低く、見直しの余地も十分にある。3万円台を再び回復、31年ぶり高値の更新へ向け、2022年の相場に対する期待は高まっている。
投資情報誌『会社四季報プロ500』では、約3800社ある上場企業から業績見通しや株価の状況、テーマ性などを考慮して選別した注目の500銘柄を掲載。四季報記者の独自業績予想や株価チャート、予想株価トレンドをはじめ、ビジュアルデータが豊富で、株式投資の初心者にもわかりやすく、ベテラン投資家は効率的な銘柄選びが可能だ。
12月15日に発売となった最新の2022年新春号では、連続最高益やV字回復などの「好業績」銘柄や、年間の配当利回りが3%超の「高配当」銘柄に加えて、「経済再開」が追い風となる銘柄、メタバースやNFTといった市場を賑わす「新技術」の関連銘柄など、要チェックのテーマ・銘柄が目白押し。
今回は「プロ500新春号」で取り上げた「生産性向上」のテーマの中から、5期前から直近本決算の実績まで、従業員の1人当たり売上高が毎期上昇している銘柄をピックアップ。あらたに全上場企業を対象として集計し、5期前と比較した直近決算期実績の増加額の大きさで上位50社のランキングを作成した。
一時的な要因による押し上げではなく、毎期着実に1人当たり売上高が上昇している企業は、生産性向上の取り組みが一定の成果を上げているといえる。岸田政権も日本経済の重要課題に掲げる、生産性向上で実績をあげている企業の顔ぶれを見ていこう。
1人当たり3.6億円増の再エネ電力小売り企業
トップは電力小売り事業を展開するイーレックス。全国に約1000社の販売代理店網を持ち、オフィスビルや工場、病院など向けに販売電力量を拡大させている。国内で5カ所のバイオマス発電所を運営するなど、再生可能エネルギーによる電力の拡販に力を入れている。
直近決算期末となる2021年3月末時点の連結従業員数は213名で、1人当たり売上高は6.6億円。5期前となる2017年3月末時点の104名から従業員数が109名増加すると同時に、1人当たり売上高は3.6億円増加している。
2位の任天堂は直近決算期となる2021年3月期に新型コロナ感染拡大による巣ごもりの影響でゲーム機「Nintendo Switch」が絶好調。「あつまれ どうぶつの森」などソフトのヒットも重なり、5期前と比べて1人当たり売上高は1.7億円増となった。2017年3月に発売となった「Nintendo Switch」の業績貢献が拡大していることが、1人当たりの生産性向上につながっている。
冷凍品などの食材を販売する「業務スーパー」をFC展開する神戸物産は、1人当たり売上高が1.3億円増となり、4位にランクイン。新規出店ペースが堅調なことに加えて、テレビなどのメディアやSNSなどでの露出増で来店客が増える好循環が起きている。生産性の向上とともに、株価も5年間で約10倍となっており、株式市場でも高い注目を集めている。
1人当たり売上高が7200万円増となり8位に入ったレーザーテックは、半導体の微細化に欠かせない最先端の露光技術である、EUV(極端紫外線)向け半導体マスク欠陥検査装置の需要増で業績が急拡大。2017年6月末時点の連結従業員数は288名で、2021年6月末時点では529名と1.8倍に増加。人員の拡充と1人当たり売上高の増加を両立している。
レーザーテックの株価は5年間で30倍超に急上昇。ここ数年間での出世銘柄の筆頭格だ。
世界的なハンバーガーチェーンの日本法人、日本マクドナルドホールディングスは1人当たり売上高が5期前比で3700万円上昇し、19位にランクイン。2020年12月期は新型コロナ影響で客数が減少する一方、持ち帰りやまとめ買いで客単価が急伸。デリバリー需要増も押し上げ要因となった。
ただ、コロナ以前も業績は着実に成長しており、異物混入問題などで赤字に苦しんだ2015年度を底に売り上げ、営業利益は毎期増加傾向。その一方で、連結従業員数は2016年12月末の2239名から2020年12月末2083名と減少している。
22期ぶりに最高純益を更新する企業も
22位の伯東は半導体や機器の専門商社。2017年3月期末時点の連結従業員数は1294名。直近決算期末の2021年3月時点では同1238名とやや減少しているものの、売上高は1275億円から1654億円と3割増。PC、5G関連需要や新たな取引開始もあった車載向け半導体などが1人当たり売上高増に寄与している。
勢いは足元でも継続しており、今2022年3月期は期中に通期計画を上方修正。22期振りに最高純益を更新する見通しだ。
従業員1人当たりの生産性向上は、各企業の成長のカギを握る重要な指標の一つ。全社の売上高、利益の推移に加えて、1人当たり売上高の推移にも目を向けると、意外な有望企業が見つかることもある。ランキングの上位企業が今後の生産性向上を継続していくことができるのか、引き続き注目してみてもいいだろう。