山口大学などの研究グループは4月2日、三重県伊勢市矢持町の山中にてレアアースの一種であるランタン(La)を含む褐簾石の新種「ランタンバナジウム褐簾石/Vanadoallanite-(La)」を発見したことを発表した。
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同成果は同大大学院理工学研究科の永嶌真理子 准教授、東京大学物性研究所の浜根大輔 博士、愛媛大学大学院理工学研究科の皆川鉄雄 教授と同 冨田宣光(博士前期課程)、稲葉幸郎(鉱物研究家)らによるもので、国際鉱物学連合(International Mineralogical Association:IMA)の新鉱物・命名・分類委員会(Commission on New Minerals, Nomenclature and Classification:CNMNC)により新鉱物として2013年3月1日に承認された。
レアアースはハイテク産業に必要な元素だが、自然界における分布やどのような鉱物に含まれているのか、また、鉱物の結晶構造のどの部分に存在するのかなどには未だに不明な点が多く残っているため、各地で研究が進められている。そうした中、研究グループでは今回、研究ターゲットの1つとして日本の秩父帯に注目して調査を行った。
秩父帯は、かつての海洋底堆積物が弱い変成を受けたのちに地表に上がってきた地質(付加体)で、昨今話題となっている南鳥島近海の海底で発見されたレアアースを含む泥の数億年後の姿に相当すると考えられているが、秩父帯に産出するレアアース鉱物の探索はこれまで進められてこなかった。
そこで研究グループは、秩父帯に属する地質で、小規模な鉄(Fe)-マンガン(Mn)鉱床が存在する三重県伊勢市矢持町の山中を調査。鉄マンガン鉱床を調べたところレアアースのランタンとレアメタルのバナジウム(V)を含む褐簾石を発見したという。
同鉱物は、レアアースのリザーバーとして高い能力を持つ緑簾石グループの一種で、その結晶構造には元素が存在する席が複数有り、それぞれの席にどの元素が存在するのかを決めるのは難しいのものの、今回発見されたランタンバナジウム褐簾石ではランタンとバナジウムが特定の席に存在することが明らかとなったほか、セリウムやプラセオジム、ネオジムなども同時に含有していることも確認したという。
なお研究グループでは、日本近海の海洋底にレアアースが濃集していることはすでに知られることとなったが、今回の成果は、そのレアアースが数億年後に地表に現れる際に褐簾石という鉱物にバナジウムを伴って固定される可能性があることを示すもので、秩父帯の中にはレアアース鉱物がまだ眠っている可能性がでてきたとコメントしている。
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