コツコツ型、大幅アップ型、年齢不問型…。年齢によって年収がどのように変化するか、企業によって異なる昇給の動きを調べたところ、そんな3つのパターンが見られたそうです。
社員クチコミサイトOpenWork(オープンワーク)を運営する「オープンワーク株式会社」がこのほど発表した「年齢別年収で読み解く企業の昇給レポート」の内容です。同社が蓄積してきた各社社員の年収データを元に、独自の手法で25歳から55歳まで5歳刻みの「年齢別年収」を計算。企業によって異なる昇給の動きについてまとめたといいます。
3つの昇給タイプの内容は以下の通りです。
コツコツ昇給型企業
年齢・年次が上がるごとに、平均年収もそれに応じて一定の割合で上昇していく…という傾向のタイプです。企業の例として「日本たばこ産業(JT)」「日立製作所」「ファイザー」があるそうです。
各年齢で年収額の幅はありますが、「日本たばこ産業(JT)」での平均を見ると、25歳では「515万円」、30歳では「646万円」、35歳では「759万円」、40歳では「856万円」、45歳では「947万円」、50歳では「1035万円」と、年齢が上がるにつれて一定の割合で昇給しています。長く在籍するほど給与が上がりやすい、安定型企業とも言えそうだといいます。
こういった「コツコツ昇給型」の企業で実際に働く社員からは、以下のようなコメントが寄せられたそうです。
【日本たばこ産業(JT)】
▽普通の評価を取っていれば定期昇給があります。年20〜30万円(賞与含め)くらいだと思います。福利厚生が非常に手厚くかつ所得税の対象外になっており、有価証券報告書の平均給与に現れませんが他社と比べても非常に良いところだと思います(経理、男性)
▽昇給は前年度の通年評価によるが、平均的な評価であれば、年額15〜20万程度、毎年昇給していく。一方でグレードが上がると、更に年額数十万の昇給が加算される。賞与については、全社業績と部門業績、個人業績から成るが、前年度の個人評価に応じて最大1カ月の月給分程度の差が生じる(人事・企画、男性)
【日立製作所】
▽しばらくは年功序列であがっていくため、同世代との差はひらかない。月収に評価にあたる増加分もあるものの、それほど大きくはなく、ボーナスや残業でカバー可能なレベル。ボーナスは評価が一段変わるごとで10万以上の差がつくため、ボーナスは大きい(開発、男性)
▽基本的に年々微増していく感じ。役職がつくまでは、同業他社と比べても平均的な年収であると思う。ボーナスは業績に左右されやすく、評価が良くても会社の業績が悪いとそちらに引っ張られることもある(設計、男性)
【ファイザー】
▽給与水準は高いと思うし昇給は毎年ある。手当もしっかりしていると思います。ハイパフォーマーになっても大きなボーナス評価は得られない。反面、ローパフォーマーはボーナスを貰えない。(MR、男性)
▽業績と評価により、インセンティブの金額が大きく波がある。高い評価を得ても、会社全体の業績が悪いと原資が小さくもらえる金額も低くなる。一方で、低評価でもグローバルや日本の業績が良いと多くもらえる年もある(マーケティング、男性)
◇ ◇
ジャンプアップ昇給型企業
とある年齢や一定の年次を境に平均年収が大幅にアップする、という傾向のパターンです。企業の例として、「三菱商事」「野村総合研究所」「野村證券」があるそうです。
「三菱商事」での平均を見ると、25歳では「801万円」、30歳では「1169万円」、35歳では「1541万円」、40歳では「1821万円」、45歳では「1965万円」、50歳では「2020万円」と、25歳から30歳になった段階と35歳から40歳になった段階でそれぞれ300万円近くアップしていました。
また、「野村総合研究所」でも、25歳から30歳になった段階でプラス350万円近く、「野村證券」ではプラス300万円近く平均年収が上がっており、年収の高いイメージのある総合商社、シンクタンク、証券会社では似たような昇給傾向が見て取れました。
「ジャンプアップ昇給型」企業で実際に働く社員からは、以下のようなコメントが寄せられたそうです。
【三菱商事】
▽基本的に6月の成果評価ボーナスが非常に大きい。評価が高ければ、個人評価/組織評価/全社評価の合算で、特に個人評価が良ければ、30代後半で1000万円弱可能。評価制度:基本的に昇格すれば、基本給/ボーナスが大きく上がる。また新入社員は他社とそれほど処遇が変わらないが、二年目に大きくアップ傾向(海外営業、男性)
▽入社9〜10年まではほぼ皆同じスピードで昇給する。管理職と言われるクラスに上がるのもそのころで、そこからは如実に差がつく。評価は年1回で、夏のボーナスに反映される。入社10年目で、評価給としての夏のボーナスが250万前後くらい。これは標準ケースで、頑張ればもっと上がるし、評価が低ければもっと下がる(営業、男性)
【野村総合研究所】
▽低い役職の時に基本的に年功序列で、最初の何年間で毎年昇級されます。一方で成果主義の面もありまして、主任になってからStayの人が多くなり、逆に能力(特に管理能力)のある人はどんどん飛び級もできます(SE、男性)
▽7〜8年目くらいまで年功序列。早ければ32、33歳から上級専門職(役無し管理職)で年収1400万〜1900万程度。部長級にならないと2000万は越えない。賞与は役職による(コンサルタント、男性)
【野村證券】
▽同年代の中では非常に高い水準であると思います。入社以降最初の3年はそこまで高くありませんが、4年目以降にぐっと上がります。7年目以降は年収1000万円を超える水準になります。ボーナスも相場に左右されますが基本的な水準は非常に高いとおもいます。同期の中でも業績によって数百万の差が出ます(営業、男性)
▽三年間の荒波をくぐり抜けた四年目以降給与が高くなる仕組み。ボーナスは年に一度。一年間の評価が翌年度の5月に反映される。初めはほぼ全員同じスタートラインだが、成績によって評価にだんだん差が出てくる(営業、女性)
◇ ◇
昇給年齢不問型企業
年齢と昇給幅の相関関係が少ないパターンです。企業の例として「SAPジャパン」「ジブラルタ生命保険」「オープンハウス」があるといいます。
「SAPジャパン」での年齢別年収の平均を見ると、30歳では「842万円」、35歳では「1023万円」、40歳では「1096万円」、45歳では「1079万円」、50歳では「1069万円」と、年齢による年収額の差が少ないことが分かりました。また、若手から給与の幅が大きいのも特徴だといいます。また、「オープンハウス」ではどの年代においても最初から変動幅が少ないですが、30歳が最も年収が高くなるようです。
「昇給年齢不問型」企業で実際に働く社員からは、以下のようなコメントが寄せられたそうです。
【SAPジャパン】
▽完全な成果報酬型。相対評価ではなく、絶対評価である。個々人のロールに合わせてKPIが設定されており、それを達成できているかどうかが重要。正当に評価されていると感じた(Presales、男性)
▽グローバルグレードという職階制度により、職務別・グレード別に給与レンジが決まっている。同一グレード内での定期昇給は微々たるものだが、昇進によってまとまって上昇する仕組み。マーケット全体の給与水準が上昇していることから、若手社員には臨時昇給もあったと聞く(コンサルタント、男性)
【ジブラルタ生命保険】
▽入社2年目までは(TAP)タップという制度によって給料を得られる。入社時に所長と自身で話し合って決めた基準額(自分の場合は月20万円)を毎月決められた数字をクリア出来ればもらえる。決められた数字よりも多く挙げれば昇給も行われる。決められた数字をクリア出来ない月が続くと、給料が下がる(営業、男性)
▽完全実力主義。4カ月以上働けばやったらやっただけもらえる。がんばればすぐに額面で60万/月も可能。ボーナスも年4回あり、稼ごうと思えばかなり稼げる。契約数で決まり、契約を取れば取るほど評価されお金はもらえるので適正感はある(営業、女性)
【オープンハウス】
▽給与制度は完全に実力主義になっています。制度上基本給が低く押さえられつつも、それ以上の実力給になっているので、実力がある人はどんどん給与が高くなっていきます。出世も早いです。出世すればさらに手当などもつくようになるので、高い報酬が期待できると思います(営業、男性)
▽給与制度は完全な成果主義。成果が出ればその分だけ年収も上がっていく傾向にあると思う。特に、営業部門やマーケティング部門は自分の頑張り次第で年収を高めることができる。成果を出せない限り給与はなかなか上がっていかない。年功序列の会社ではないので、若いうちからお金が欲しいという人にもおすすめの職場だと思う(営業、女性)
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