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配偶者控除「年収150万円に引き上げ」の影響は? FPが解説

2016年12月02日 09時17分17秒 | 労務
配偶者控除が撤廃されるというニュースが、マスコミをにぎわせたのも束の間、すぐに見送りとなり驚いたのは10月。しかし、結局反対に、「配偶者控除の対象となる妻の給与収入上限を、現在の103万円から150万円に2017年から引き上げる」という案で最終調整に入っている。
施行されれば、103万円以内に抑えようとしていたパート主婦(主夫)が、150万円まで働いても夫の税金が上がらないことになり、その分労働時間を伸ばすことができるため、働き方は大きく変わることが考えられる。配偶者控除が150万円になるとどのような影響があるのかを、消費者の目線からわかりやすく解説しよう。
■収入と所得違い 「103万円の壁」が「150万円の壁」になる意味
収入と所得の違いについてご存知だろうか。税金を考える上で、この2つの違いを知ることは重要だ。給料や賞与など勤務先から得たお金は「給与所得」という所得に分類される。その「給与所得」には「給与所得控除」という控除があり、実際に使ったか使わなかったかにかかわらずみなし経費として認められている。
例えば、給料や賞与などの額が合計年間103万円とすれば、以下のようになる。
◯103万円(給料など)-65万(給与所得控除)=38万円(給与所得)」
妻の給与所得が38万円以下なので、夫は配偶者控除38万円(所得税)、33万円(住民税)を受けることができる。夫の所得税率が10%なら、所得税が3万8000円、住民税は3万3000円、合計およそ7万円が夫の給与から減税となる。
現在は、妻の給与収入が150万円となれば夫は配偶者(特別)控除を受けることができないため、パート主婦はなんとか103万円までに抑えようと、年末が近づくと働く時間を制限している。
■配偶者控除の上限が150万円になる影響は?
この配偶者控除が得られる境目が150万円に決定されるとどうなるのか。パート主婦は働く時間を、現在との差額47万円分の労働時間を増やしても、今まで通り夫は配偶者控除を受けることができ、夫の収入額が変わらなければ税額は変わらない。
では、妻の側から見るとどうだろう?

◯150万円(給料・賞与など)-65万円(給与所得控除)=85万円(給与所得)
◯85万円(給与所得)-38万円(基礎控除)-23万円(社会保険料控除)=24万円(課税所得)
他に所得控除がなければ、24万円が課税所得となり、所得税1万2000円、住民税約2万9000円、合計年間およそ4万円の税金がかかるが、103万円と比べると世帯としては20万円所得増となる。
考慮したいのが、夫に支給されている「配偶者手当」だ。この手当を受けることができる基準は、夫の勤務先によって変わるが、一般的に妻の収入が103万円以下としていることが多い。妻の収入が103万円を超えるとその手当が全て無くなる可能性もある。しかし、この配偶者手当については、国の女性活躍推進に従って、また人材不足であることも踏まえて、企業側も見直すことを検討しているので、動向について更に注意が必要だ。
■もうひとつ耳にする「130万円の壁」は「106万円の壁」に変更
もうひとつ、パート主婦が103万円を超えた収入を得る場合に気を付けたいのが「130円の壁」だ。夫の健康保険上の扶養配偶者、国民年金上の第3号被保険者となるための要件である。これは税金とは全く関係ないので、頭を切り替えて頂きたい。
日本は国民皆保険・皆年金であるため、収入が130万円を超えると、国民健康保険または健康保険と、国民年金または厚生年金に妻自身で加入しなければならず、保険料の支払い義務も負うこととなる。給与所得者であれば給与総額の約15%の保険料負担となり、手取りは更に減ってしまう。
しかし、健康保険と厚生年金保険に加入することのメリットは大きい。例えば、健康保険には「傷病手当金」をいう給付があり、これは病気やケガで長期の休暇を余儀なくされ収入が減った場合、健康保険から最長1年6ヶ月間給与の約7割が支給されるというもので、自身の加入している保険を見直して、保険料の削減が見込める可能性も出てくる。厚生年金保険においても、将来受け取る年金額は増額となるし、障害年金や遺族年金を受給できる対象も広がる。
なお、2016年10月からは、以下の条件全てを満たしたパート主婦は、年間収入130万円ではなく、106万円以上に変更になったので注意したい。
・勤務時間が週20時間以上
・1カ月の賃金が8.8万円(年収106万円)以上
・勤務期間が1年以上の見込み
・従業員501人以上の事業所
※学生は対象外
■制度は変わる「配偶者控除の廃止案や額の変更案」
今回の配偶者控除の廃止案や額変更案で痛感したのが、「制度は変わる」ということだ。その時に有利な方法を選んだとしても、法律は変わる可能性があり、未来永劫有利であるわけではない。
もちろん制度を知ることはとても重要だ。しかしそれに振り回されてはいけない。仕事に対して、自分は将来どうなりたいのか、どのような自分になっていたいのか、そのことを一番に考える。
今は不利だとしても、自分の目標のために選んだのであれば納得がいくし、何より法律に振り回されることはない。この改正を機会に、将来の見据えた自分の働き方、仕事に対する向き合い方について、ぜひ深く考えてもらいたい。
小野みゆき中高年女性のお金のホームドクター
社会保険労務士・CFP®・1級DCプランナー。企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆などを中心に活躍中。FPCafe登録FP(https://fpcafe.jp/)

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