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発表力をつける

2008-07-05 | わかりやすい表現
04/2/5海保
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3部 コミュニケーション力アップのための心理技法 60p  
8章 発表力を高める  400行で20p


8.1 発表する

人を目の前にして表現する
 文章を書くときも、それを誰がどんな状況でどのように読むのかに思いをはせることが大切なことはすでに前章で述べました。
 しかし、文章を書く作業そのものは、まったくの孤独な作業です。読んでくれるであろう人に時折は思いをはせても、書く内容をどうするか、どのように表現するかのほうにより頭を使うことになります。
 これが、発表となると、そうはいきません。
 発表しているその場に、聞いて欲しい人々がいます。否が応にも、受け手を意識せざるをえません。これが、発表と文章表現の大きな違いです。
 中高生での発表は、教室でのよく知った仲間を相手にすることがほとんどだと思いますが、不特定多数相手の場合には、想定される聴衆をあらかじめ分析することが必須です。
 図には、聴衆分析の1例を示しておきます。

図 関連知識の多少と動機づけの高低の観点からの聴衆のタイプ分析
***pp
  
 場合によっては、自分の発表は、こんな人に聞いて欲しいと宣言するようなことがあってもよいと思います。

発表力の文化差
 話を先に進める前に、大事な余談を一つ。
 発表は、英語では「プレゼンテーション(presentation)」、日本では省略して、プレゼンとも言います。
 そのプレゼンが、アメリカ人とくらべると日本人はひどくへたなのです。
 最も基本的なところでは、「自己主張」の違いがあります。自分の中に、これが言いたい、聞いてもらいたいというものがあってはじめてプレゼンが成り立ちます。ここのところに、まず、我彼の違いがあります。
 日本人のプレゼンで実にしばしば、「これは私の個人的な意見ですが、---」とか「私の独断と偏見かもしれませんが、---」といった枕詞が出てきます。
 聴衆からすれば、意見、独断、偏見こそ聞きたいことなのです。そんな枕詞は不要です。プレゼンでは、大いに、意見、独断、偏見を披露してよいのです。それをきっかけに、質疑応答が活発になれば、プレゼンの目的は半ば成功なのです。
 アメリカの学会にはじめて参加してびっくりしたことは、発表が終ると、質問者が会場のマイクの前に行列する光景でした。日本では、司会者がお義理の質問を一つか2つしておしまいというのが常です。ここにも、自己主張の強さの違いが反映しています。
 さらに、プレゼン技法も雲泥の差があります。
 プレゼンは、文章表現とは違って、表現者が聴衆の面前に出てきます。発表する内容もさることながら、声の調子、顔の表情、視線、からだの動きが、衆目にさらされます。その巧拙がたちどころにプレゼン効果としてはねかえってきます。
 これが日本人はへたなのです。というより、あえて、技法を使わない控え目なプレゼンがよいとする発表文化があるのでは、とさえ思ってしまいます。
 なお、これは文化差ではありませんが、厚生労働省が03年12月におこなった1472社へのアンケート調査では、新規採用で重視するとしたのは、「コミュニケーション能力」が最多で86%にものぼります。2番目が「基礎学力」71%でした。
 こんなことにも思いをはせながら、以下、発表を効果的にするための考えどころを提案してみたいと思います。

8.2 発表を準備する

言いたいことを整理して絞り込む---準備その1
 文章を書くときの紙幅制限に相当するのが、発表時間の制限です。
それも、教室での発表となると、10分程度とかなり短いのが普通です。
 となると、その時間内で発表をまとめるためには、それなりの準備が必要となります。
 その準備の最初が、発表で言いたいことは何かを決めることです。
これは、前節での構想の精選と具体化でおこなったことを思い出してください。
 文章表現の場合と違うのは、制限の厳しさです。何度でも読み返してもらえる文章表現とは違って、発表は短時間の1回勝負ですから、言いたいことをかなり絞らないと、聞き手の頭に残りません。
どれくらいに絞るかですが、3つ、多くても5つまでです。
 発表の冒頭で、これを「発表のねらいは、第一に----、第2に----、第に----」とはっきりと宣言してしまいます。

発表の資料を作る----準備その2
 発表の資料は、呈示用と配付用とがあります。両者が一緒ということもあります。
 資料の配布と呈示は、口頭説明のおぼつかなさを補うものです。
 口頭による説明のおぼつかなさは、伝言ゲームという遊びをしてみるとよくわかります。
 五人くらいが横一列に並びます。左はしの人に文章を暗記してもらってから、口頭で隣の人にその内容を伝えます。最後の人に再生してもらうと、内容の中核のところさえ、変わってしまったり、落とされてしまうことがあります。
 呈示用の資料は、文章表現と「ビジュアル表現(目で見てわかる表現)」とを使うことになります。
 内容は、大きく3つに分かれます。
「大枠とポイントの箇条書き」
 話の大枠とポイントを箇条書きで見せて、それに沿って発表していきます。
「図解」
 話の一定のまとまりごとに、あるいは、大事な内容が一目で見えるように、図解をします。これを見ながら発表するか、話して終ってから、まとめとして見せるかします。
「例示」
 発表に関係する写真や図表など具体例を見せます。

 大がかりになると、これら3つのタイプをすべて呈示資料として使いますが、10分程度の発表では、「例示」を使うくらいでよいと思います。
 ただ、本の目次があると全体がイメージできるように、発表でも、「大枠とポイントの箇条書き」を最初に示して、発表の全体像をイメージしてもらうのは、効果的です。 
 口頭説明のおぼつかなさのもう一つは、1次元的な時間の流れの中でしか説明できないところにあります。全体と部分、部分と部分の関係がどうしても見えなくなります。それを補う工夫の一つが、「大枠とポイントの箇条書き」のビジュアル表現です。

発表のリハーサルをする---準備その3
 文章を書いているときは、意識的にも、無意識的にも実に頻繁に推敲をしています。書いては消し書いては消しを大小取り混ぜると、どれくらいしているか見当もつきません。
 しかも、書き手としての推敲だけでなく、読み手の立場からの推敲もすることがあります。したがって、書き終わると、完成度が9割以上ということなります。
 しかし、発表の場合には、資料作りが終わっても、事はまだ半分くらいまでしかいっていません。発表そのものは実際にやってみないと、それでよいかどうかがわからないからです。
 では発表のリハーサルではどんなことをすればよいのでしょうか。
 一つは、時間管理です。
 きめられた時間内に終えるには、どうしても一度や2度は、本番を想定してストップウオッチを使って練習してみるしかありません。
 一番確実なのは、発表原稿を作ることです。
NHKのアナウンサーは、1分間350文字の速度で話すようにしているそうです。この当たりが一つの目安になります。
 ただし、気をつけてほしいのは、原稿をひたすら読むような発表は厳禁ということです。それなら、文書にして配るほうが、はるかに効果的に伝えることができます。
 したがって、発表原稿は、読みあげるための原稿ではなく、何をどのような時間進行に従って話すかを書いたシナリオ風のものにするべきです。
 さらに発表のリハーサルには、話し方や身のこなし方などの練習もありますが、これは、場数を踏みながら経験を重ねて身につけていくことになります。どんな点がポイントかは、次節で紹介します。
 ただ、発表は、リハーサルすればするほど、うまくなります。
 その気になってやってみてください。今は、家に録音も録画もできる機器があります。それを使えば、ちょっと気恥ずかしいですが、自分でチェックすることもできます。
 一番いいのは、仲間の前で実践を想定してリハーサルして、評価してもらうことであるのは、言うまでもありません。


8.3 発表をする

人が目の前にいると
 人間は、人と人との間と書きます。私達は、人は人との関係の中で生かされています。これを間人(かんじん)性という人もいます。
 ですから、対人関係が大切になってきます。人から嫌われるより好かれたいとの思いを誰しもが持ちます。
 その思いが強すぎるためでしょうか。人が目の前にいると、どうしても緊張してあがり気味になってしまいます。
 そんな中で、自分の思いを表現しなければならないのが、発表なのです。
 ですから、発表を効果的にものにするには、発表内容そのものに工夫を凝らすだけではなく、発表の仕方のほうにも、かなりの力を注がなければなりません。これを身につけるには、どんなところに注意すればよいかについての知識を持つことと、折に触れて実践をしてみること、さらに、人の発表から学ぶことです。
 以下、話し方、視線、表情、ジェスチャーの4つについて、それぞれのポイントを考えてみることにします。

話し方を工夫する 
 声を使ったコミュニケーションは、誰もがそれなりにできます。それだけに、とりたてて工夫をしなくともなんとかなるだろうと思いがちです。
 ところが、あらためて人前であいさつをしたり、発表したりすると、そのことがとんでもない思い違いであることに気づかされます。
文章技法と同じで、話し方技法もあるのです。
 まず、基本になるのは、声の使い方です。
 声には、その音波としての物理的な特性に対応して、振幅には、大きさ、振動数には高低、波形には音色の3つ特性がありますので、自分の声の特性をまず知ることです。とはいっても、声の特性、とりわけ、高低と音色は、遺伝的なところがありますから、変えることのできる範囲は限られています。
 発表で一番注意しなければならないのは、声の大きさです。
これは、かなり自分でコントロールできますので、会場の大きさや聴衆の数によって調整することになります。だいたい、普段の声の大きさの1.5倍くらいの感じです。不安なときは、聴衆の後部にいる人に聞こえるかどうかを聞いてみるとよいと思います。

 次は、話し方です。話術と言われることもあるくらいに、大技、小技とりまぜて多彩な技術が、それぞれの状況に応じてあります。
 ここでは、話を具体的にするために、「携帯電話と高校生」というテーマで、10分程度の教室での発表を想定して、その開始から終了までの時間の流れに沿って、有効な話術のうちから大技だけを紹介してみます。

1)発表の始まり段階での話術
 発表タイトルと自分の名前を言った後、まず、発表の大枠と発表の流れをはっきりと言います。
 これによって、全体のイメージがわきますし、聞き手は、それについて持っている知識を呼び起こし、発表内容を取り込む網を頭の中に用意します。2.2「記憶されている知識の関係づけをする」を参照してください。
 場合によっては、結論を先に言ってしまうこともありえます。
 これは、かなり思い切ったやり方ですが、それぞれの意見をぶつけ合うような場なら、有効です。発表の冒頭から緊張感を持って聞いてもらえます。
 
学習力トレーニング「発表の冒頭の一言を工夫する」****¥
「携帯電話と高校生」という発表での冒頭での一言は、あなたならどうしますか。*1
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  発表の冒頭でやってはいけないことは、言い訳です。
 「充分な時間がなかったので」「あがっているので」「思い付きのような意見なので、恥ずかしいのですが」などなど。言い訳言葉には事欠きません。
 言い訳は「自己防衛」のためですが、それを言ったからといって、どうこうなるわけではありません。自信を持って発表に望むべきです。そして、ずばり、本題に入るほうが、すっきりして好印象を持ってもらえます。
 
2)発表の途中段階での話術
 10分間くらいなら、集中して聞いてもらえるとは思いますが、それでも、次のような工夫をすることで、聴き手の注意を持続させることができます。ことです。
 一つは、随所でビジュアル表現を呈示することです。
 音声にだけ目を向けていると、どうしても注意の集中が途切れます。そん時、変化をつけると、再び、注意が復活します。
 一番効果的な変化が、ビジュアル表現です。ポスターやスライドなどで、大きく描いたビジュアル表現をみせると、聴覚から視覚へと処理モードの変化が起こりますから、再び、注意を向けてもらえます。
 ただし、あまりたくさんの情報を一枚のビジュアルには入れないようにします。説明のポイントが、わからなくなるからです。
 また、説明しながら、少しずつみせていくのが効果的です。一度にすべてをみせてしまうと、話よりも、ビジュアルのほうに注意が奪われてしまうことがあるからです。
 話の内容については、体験談を入れると、発表が具体的なものになり、聴き手が話を自分に引き付けて考えてくれます。
 データや証拠を示すことも、とりわけ、意見発表のときは、極めて大事です。
 もう一つの工夫としては、難しい話なら、たとえや具体例を入れるといったやや高等な工夫があります。これがなぜ高等かと言うと、話の内容を相当に詳しく知らなければ、適切なたとえをみつけるのが難しいからです。

学習力トレーニング「体験談とたとえを探してみる」******
 「高校生と携帯電話」で使えそうな体験談、たとえを考えみてください。*2
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3)発表の終了段階での話術
 制限時間2分前あたりから終了を意識します。時間通りに終えることが絶対だからです。
 まず、制限時間内に終れるかどうかの見通しをつけます。
延びそうなときのことを想定して、「まとめ」の資料を作っておきます。時間が残ったら、これを読みながら時間を調整します。時間がないようなら、それを呈示するだけにします。質疑応答中も、それを呈示したままにします。
 制限時間がきたら、終わりをはっきりと宣言します。
 「ではこれで発表を終ります」の一言でよいのですが、ここでも、言い訳が入ってしまうことがあります。「まとまりのない話ですみません」「わかりにくかったかも」などなど。日本人は本当に言い訳が好きなようです。「過ぎたるは猶及ばざるごとし」です。

学習力トレーニング「発表の終りを考えてみる」*******
 「高校生と携帯電話」での発表を終える寸前はどうなるか考えてみてください。*3
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視線の動かし方を工夫する---非言語的メッセージの工夫その1
 眼は心の窓です。驚き、喜びなど強い感情は、眼の真ん中にある瞳孔を大きくさせます。
 眼は口ほどにものを言います。眼だけで相手にかなりのことを伝えることができます。サッカーの試合では、選手どうしのアイコンタクトが大事なのだそうです。発表のときも、視線の動きが大事になってきます。
 あちらこちらに頻繁に視線を動かしっぱなしは、自信がないように見えます。逆に、視線を一点に停止したままも、不自然で人間味を感じません。また、その1点が特定の人の顔であれば、どうでしょうか。
 発表のときの視点の動きは、ゆったりと8の字を描いて会場全体を見るつもり動かすとよいとされています。
 原稿や呈示資料に釘付けは、厳禁です。

*****イラスト案
明るい顔で、頭を動かして教室全体に視線を配りながら、「これから、---について発表します」といっているところ
*******

顔の表情を工夫する---非言語的メッセージの工夫その2
 顔の表情は感情を表出したものです。
 恐怖、驚嘆、悲観、憎悪、激怒、警戒、憧憬の8つの「基本感情」にほぼ対応した表情があることが知られています。そして、表情からその人がどんな感情状態かをだいたい当てることができることもわかっています。
 ある程度は、顔の表情だけを感情とは別に意図的に作り出すことはできますが、俳優にでもなろうとするならともかく、普通の人がうれしくもないのに笑い顔だけを工夫するといっても、できることはたかが知れています。無理にやればその不自然さのほうが、目立ってしまいます。
 ですから、ここでアドバイスできることはそれほどありません。せいぜいが、発表するのが楽しいという気持ちを持つことです。
そうすれば、自然に顔にそれが出てきます。聴衆は、その表情からあなたの気持ちを読み取り、共感してくれます。
 顔の表情のことを心配するより、感情のほう、とりわけ、あがり対策のほうに少し気を使う必要があります。
 人前にたつと、たいていの人は緊張しすぎてしまいます。へたをすると、頭の中が真っ白になってしまいます。顔面が硬直してしまいます。
 こうならないためには、発表のリハーサルを本番を想定してやることが一番です。それができないときは、一人リハーサルでもよいと思います。
 スポーツ選手があがり対策によく使う、イメージ訓練も効果があります。寝る前や風呂に入りながら、発表する自分の姿をイメージしながら、イメージの中で発表してみるのです。
 あとは当日の対策になります。
 ・会場に早めに行って雰囲気に慣れておく
 ・聴衆はカボチャと思う
 ・深呼吸をする
 ・自己洞察をして、あがりと親しむ
 このようなよく知られた対策も、それなりに効果がありますので、試してみてください。
 あがり対策については、5.2「失敗するのはなぜ」の項も参照してください。

ジェスチャーを工夫する---非言語的メッセージの工夫その3
 さて、非言語的なメッセージの最後は、ジュスチャーになります。
 この節の冒頭で表現の文化差の話をしましたが、このジェスチャーにも、アメリカ人と比較すると、日本人はかなり控え目です。
講演台でひたすら原稿を読むのが日本人、壇上の真ん中あたりで手振り、身振りよろしく話すのが、アメリカ人です。
 ジェスチャーには、手振りと身振りとがあります。
 いずれも、コミュニケーションにおいて、それなりに大切な役割を果たしています。
 まず、身振りから。
 身振りの基本は、姿勢と動作です。
 発表では、姿勢はやや前傾にして背筋をのばします。
前傾は親しみと自己主張の強さを演出します。背筋をのばすと自信のある印象を与えます。
 動作は発表の速度に合わせて、ゆったりした感じで狭い範囲内を動きます。直立不動や、逆に大げさな動きはしないほうがよいと思います。
 次は、手振りです。
 コミュニケーションにおいて、手振りは、3つの機能を果たしています。
1)話の内容を具体化する
 例 「これくらいの大きさです」といって手を広げる
2)話のメリハリをつける
 例 「ここが大事なところ」と言いながら、手を動かす
3)話の調整をする
 例 「えーと」と言いながら、手を額に持っていく

 動作と同じで、あまり派手に手振りを使うとめざわりですが、適度に使うことで表現効果を挙げることができます。

内容と話し方と非言語的メッセージと
 発表の主要3要素、内容、声・話し方、非言語的メッセージについて、それぞれの効果を高める工夫について考えてみました。
 しかし、実際の発表の効果は、この3要素が一体になって生み出されます。
 図には、かなり大雑把な推定ですが、発表における3つの要素の効果割合を示してみました。

図 プレゼンや発表の主要3要素とその効果 pp

 内容の効果が小さくて意外に思われるかもしれませんが、ここが文章表現との一番大きな違いです。
 これに関連したおもいしろ研究を一つ、紹介しておきます。
 大学生を相手に、一つのクラスでは、内容は支離滅裂、しかし、話術、非言語的メッセージも巧みに、俳優が扮するドクターフォックス(キツネ博士)氏が講義をします。
 もう一方のクラスでは、理路整然と、しかし、話術、非言語的メッセージは控え目にしたドクタージャパン氏が講義をします。
 講義終了後に、学生にそれぞれの先生の授業評価をしてもらいます。どちらのほうが、良い評価を受けたと思いますか。
 ドクターフォックス氏のほうです。なんと、内容についての評価点もドクタージャパン氏より良かったのです。
 これは、Dr.Fox効果として知られています。
 だからといって、内容のほうはおざなりでよいということではありません。ただ、内容さえ良ければ、発表の仕方はどうでもよい、と考えがちな日本人には、Dr.Fox 効果は教訓的ですね。
 ちなみに、授業評価の観点には、内容の好し悪し、講義の仕方の巧拙、さらに、教師の熱意の3つがあります。Dr.Fox効果は、内容だけよくても学生はついてきません、という教訓を教師に投げかけていますね。

*1「高校生が今、携帯電話をどのように使っているかの調査データに基づいて、使用上の問題点をいくつか紹介します」。あるいは、結論先行表現なら、「高校生は携帯電話をもつべきではない、ということを、アンケートの調査データに基づいて主張してみたいと思います」。
*2 体験談で受けのよいのは、失敗談です。「メールを打つのに夢中になっていて段差で転んだ」など。たとえとしては、「携帯電話はコンピュータだ」「携帯電話をかけている若者は、まるでサルが電話をしているようだ」(これはやや際物的なたとえ!!)などなど。
*3 「高校生と携帯電話」について、「高校生は携帯電話を持たない方がよい」という意見とその根拠を説明しました。これで発表を終ります。」

**********
コラム「説得を効果的にするための指針」
 本文では、説明的な発表のほうに重点が置かれました。発表には、自分の思いを相手にぶつけて説得することもあります。その技法について、拙著「自己表現力をつける」(日本経済新聞社)から、指針にふさわしいものを拾ってみました。

●説得を効果的なものにするための4つの原則
・相手の気持ちに配慮する
・静かな迫力を示す
・説得する内容の価値を信じていること
・相手のためになると信じていること
●説得を効果的なものにするための7か条
・親しみを見せる
・実益を先に示す
・知的好奇心に訴える
・情報を少なめにする
・議論する
・人、状況をみて説く
・広告宣伝の手法(アイドマの法則)も使ってみる
  注意を引く(Attention)  利益に訴える( Interest )
  欲求を刺激する( Desire) 記憶してもらう( Memory)
  買いにきてもらう( Action)



スポーツでリスク感覚を養う

2008-07-05 | 健康・スポーツ心理学
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2006-05-13 08:56:57
スポーツでリスク感覚を養う
テーマ:中高生の心へのメッセ


「スポーツで養うリスク感覚」



スポーツ大会ですね。

スポーツは、リスク満載です。
怪我をする「身体上のリスク」もあります。
負けて自尊心を傷つけられる「心理的なリスク」もあります。
自分のポカやミスでチームが負けてしまって仲間に迷惑をかけてしまう「社会的なリ
スク」もあります。

だからこそ、スポーツは面白いのです。

リスクを高く見積もって、ちじこまってしまう人もいます。
リスクを低く見積もって、怪我をしてしまうくらい頑張ってしまう人もいます。

スポーツは、リスクの自己管理の実習の場でもあります。

○自分の力の限界を知る
○心と身体のギャップを知る

スポーツ大好き、でも、最近、あまりからだを動かしていない人は、とりわけ、身体上のリスクには充分に留意して怪我をしないようにしてください。

こんなことにも思いをはせながら、2日間のスポーツ大会を大いに楽しんでください。

●「真の勇気というものは、極度の臆病と向こう見ずの中間にある」(セルバンテス)
●「奪い合うことの喜び 一身に集めてはずむ ラグビーボール」(俵万智「サラダ記念日」)

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裁判員制度がはじまる

2008-07-05 | わかりやすい表現
● 裁判員制度がはじまる
 平成21年5月までに裁判員制度が導入される。ウイキイペディアによると、次のように紹介されている。

裁判員制度は、市民(衆議院議員選挙の有権者)から無作為に選ばれた裁判員が裁判官とともに裁判を行う制度で、国民の司法参加により市民が持つ日常感覚や常識といったものを裁判に反映するとともに、司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上を図ることが目的とされている。

ちなみに、これだけの内容を1文で書いている。こんな悪文を書く人々が裁判員制度を運用するのかと思うと、はじまる前から絶望的になってしまう。
 それはさておき、法曹界は、ほとんどの国民にとってその重要性は認識はできていても、みずからがその当事者になるとはまず思ってもいなかった世界である。それが、突然、裁判所になかば強制的に呼び出されて、判決の決定にかかわる一人になるのである。
 これは、法曹界にとってのみならず、市民にとっても、いろいろの意味で画期的なことである。
 わかりやすさに話を限定しても、この制度の画期的なところーーそれはまた克服しなければならない課題でもあるのだがーーを2つ挙げておく。
 一つは、法律の壁で強固に守られていた法曹界が、その外にいる市民を受け入れるにあたり、どのようにコミュニケーションをはかるかを考えざるをえなくなったことである。
 日本弁護士連合会では、素人が耳で聞いてわかる言葉使いを公表しているが(朝日新聞、07年12月20日朝刊)。言葉の言い換えだけで事が済むほど、ことは簡単ではない。しかし、とりあえずは、ささやかだが、有効な試みだと思う。たとえば、
・冒頭陳述――>検察官や弁護人g証拠調べの最初に述べる事件のストーリー
・教唆犯――>他人をそののかして犯罪を行わせた人
・未必の殺意ーー>必ず殺してやろうと思ったわけではないが、死んでしまうならそれでも仕方がないと思って○○した。
 これまでは、法律知識とその運用技術を共有していた人々の間でのコミュニケーションで済んでいたのが、ほとんど知的な共有基盤を持たない人々とコミュニケーションをしなければならなくなったのであるから、考え方のくせや視点の違いなど知的基盤のもっと大掛かりなところでのギャップにまで思いをはせなければならなくなった。
 これと関連するが、2つは、そのコミュニケーションも、広報などのような一方的な流れではなく、市民の側に、コミュニケーションの内容が単にわかるだけでなく、それに基づいた妥当な判断まで要求することである。
「わかった」おしまい、というのではなく、「わかった、それならこうしたらどうか」までを要求する「深い」コミュニケーション事態に誰もがさらされることになるのである。