天網恢恢疎にして漏らさず

映画レビューを中心に(基本ネタバレバレです)スキーやグルメ他、日々どうでもいいような事をダラダラと綴っています。

「日輪の遺産」60

2011年09月07日 | 映画感想
「日輪の遺産」

浅田次郎著の同名タイトル小説の映画化。
私、一時期浅田次郎にハマってて、彼の作品って結構読んでるんですよね。
本作も当時ハードカバー買って読んだ。とっくにBOOKOFFに売っ払ったけどなw
ところで読んだ当時、かなり感動して読みながら泣いたような記憶があるんだけど
今日映画見に行こうとして思い返しても・・・大まかなあらすじ程度しか思い出せない(ヒー
私、もしかして認知症なのかしら。ヤベーぞ><

あーいやいや、映画見てる内になんとなーくディティールも思い出したけどね。てか思い出さないとマジでヤバイしw

本作のあらすじは
1945年8月10日、陸軍少佐の真柴は軍トップに呼び出され直接密命を受けた。
それは戦時下でマニラから奪取したマッカーサーの財宝900億円(現在の価値で200兆円)を
秘密裏に軍事工場の廃坑に隠匿せよ、というモノだった。
共に密命を受けた小泉少尉、望月曹長と3人で極秘任務を遂行するのだが、隠匿作業の従事者として
勤労動員の20名の少女達が派遣されて来た。
果たして作業が終わる頃、真柴の元に残酷な命令が下る。少女達の運命は?そして財宝の行方は・・・?

堺雅人さんが真柴少佐役。坊主頭もステキ♪目元は涼やかで優しげなんだけどキリッとしててカッコイイ!
てか、映画冒頭からめっちゃくちゃ違和感があって・・・確か原作小説は競馬場でヨボヨボ爺がのたれ死んで~
というエピソードだったと思うんだけど、映画ではいきなり金原のジーサンが死ぬ(!)
そして連れ合いのバーサンが孫娘達に長年自分とジーサンが守り抜いてきた秘密の出来事を語る、という流れ。

まあ、原作通りである必要はない。原作と同じだと妙齢の美女が登場する場面がないから画面に花がなくなる。
劇中の中心は真柴少佐達と作業に従事する勤労学生の少女達だけど、「少女・萌♪」はいさかさ難があるしなw

戦争映画だけど、ドンパチシーンがある訳じゃない。
終戦(敗戦)直前の日本で、陰ながらも命を賭して国体を、未来の日本を守ろうとした少女達がいた・・・という話。
戦場だけが戦争じゃない、我々の身近に、日本国中に、日本国民全てに、「戦争」という魔物が襲い掛かり
それでも未来の輝かしい日本の再生を夢見て散らして行った命があったのだ、という・・・フィクションですよ。
コレは「TRUE STORY」というテロップはありません。完全なる浅田次郎氏の創作した物語です。

この物語は完全な作り話だけど、今も語られるあの終戦直前の日本の様子を想像するに、この映画のような話が
本当にあったとしても何ら不思議はない、むしろあって当たり前だったのではないか?位の気持ちになる。

今の若者がこの映画を見たら、きっと多くの人が「何故少女達が死ななければならなかったのか?理解が出来ない」
「死ぬ必要などないのにわざわざ自ら命を落とすような愚かな事をして意味が判らない」と思うだろうと。
正直言って私だって「もし私がこの勤労学生だったとしたら・・・自分1人だけでも逃げ切って生き延びたい」と
思うんだけど、それは戦争のない現代で将来への不安も特になくのうのうと生きているからこその考えなんだと思う。

この時代はそうじゃなかった。
少年兵が「母なる国を守る為」と言って特攻機で敵艦に突撃し、回天に乗って人間魚雷となって海の藻屑と散り、
サイパン島では「米兵の蹂躙に遭って穢される事は日本の恥」と多くの女・子供が崖から身を投げた。
言い方は悪いけど・・・人間、個々の命が遥かに軽視されていた。
「日本」という大きな、絶対的に守るべきモノの前では人間1つ1つの命など取るに足らないモノだった。
国民のなくなった国など意味を成さないのに、でも当時の日本人は最後の1人の命が消えるまで「国」というモノの為に
戦い続けなければ、守り続けなければならないのだとみんな本気で信じていた。

そういう、今の若者には理解不可能な昔の日本人の話。

今の私には「何という愚かな・・・」としか思えないが、こういう歴史を経て今の日本があるのだと。
親、祖父、曾祖父、綿々と続く歴史の中で、こういう行動原理が日本人の勤勉で真面目なメンタリティを作り上げて来たのだと。
いわゆる「国民性」と呼ばれるものを形作る上で、こういう日本の歴史は非常に重要視されるべき事だろうと思う。

ところでそんな非常にダークで、かつ重たく、かつ絵的にも地味な話なのでエンターテイメント性はほとんどない。
堺雅人さんファンで彼お目当てで見に来たアラサー・アラフォー女子等は「なんかー。暗くてつまんなぁ~い」と
ハナクソほじってしまう危険性すらはらんでいる^^;
そして個人的に言わせてもらえば、少女達が何故そこまでして命を散らさねばならなかったのか(命令はなくなったのに)
という部分の心情の掘り下げが少々甘いように感じましたね。だからあのシーンがちょっと唐突に感じてしまう。

そして、本作は語り部が2人いるんだけど(金原のバーサンと元マッカーサーの通訳)
元マッカーサーの通訳はいらないと思った。一通りの物語が金原のバーサンから語られて幕を閉じた後に
いつまでもいつまでもダラダラと続くのはちょっといただけない。
語り部は金原のバーサン1人に集約して、「その後の事」については金原のバーサンのクチから「風の便りで聞いた話だとね・・・」
という語りから当時のシーンの再現映像を流して締め、にした方がスマートだったと思う。

ちょっとムダな部分の演出過多な気がしますが、若者に是非見て欲しい作品ですね。
そしてきっと若者には見向きもされないのであろうとw
・・・劇場内の平均年齢が恐ろしく高かったですしね。まあ仕方ないんでしょうけど^^;
コメント (7)
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