天網恢恢疎にして漏らさず

映画レビューを中心に(基本ネタバレバレです)スキーやグルメ他、日々どうでもいいような事をダラダラと綴っています。

【映画】「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」@14本目

2018年04月04日 | 映画感想
「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」

スピルバーグ監督作品。今年のアカデミー賞にいくつかの部門でノミネートされてましたね。
それより公式サイトを見てちょっとびっくりしたんですが、本作のダブル主演(と言っていいでしょう)トム・ハンクスとメリル・ストリープって
コレが初共演なんですね!しかもメリルに至ってはスピルバーグ作品初出演なんだとか。
余りにもスクリーンで見慣れた顔触れなのでてっきり既に何度も共演していてメリルにしてもすっかりスピルバーグ常連組ぐらいに思ってました。

スピルバーグは多分ライフワークにしてると思うんだけど定期的に「史実の映画化」に取り組んでいますよね。
最も有名なのはオスカー取りまくった「シンドラーのリスト」だと思うけど他にも「プライベート・ライアン」「リンカーン」「ブリッジ・オブ・スパイ」とかね。
そんな訳で本作も史実を基にした事件の映画化。

あらすじ…書くのが面倒臭いのでまたしてもYahoo!Movieから抜粋
ベトナム戦争の最中だった1971年、アメリカでは反戦運動が盛り上がりを見せていた。
そんな中、「The New York Times」が政府の極秘文書“ペンタゴン・ペーパーズ”の存在を暴く。ライバル紙である「The Washington Post」の
キャサリン(メリル・ストリープ)と部下のベン(トム・ハンクス)らも、報道の自由を求めて立ち上がり……。【シネマトゥデイ (外部リンク)】

この物語は色んな要素がぶっ込まれていて…先ずはアメリカ政府がベトナム戦争の敗戦をかなり前から緻密な分析によって予見していたにも関わらず
時の大統領達が「自分が大統領をやってる間に【敗戦】にさせたくない」という思惑から(自分が歴史的に不名誉な大統領になりたくないという保身)
この事実を隠ぺいして無駄に若者を戦場に投入して被害を拡大させてしまったという事。

それから「政治」と「報道の自由」のバランスシート問題。この隠ぺいをマスコミが世間に公表するに当たっては「機密文書漏洩」という【犯罪】が絡む訳で、
マスコミが公表するという事はこの「機密文書漏洩」に加担する、要するに「犯罪者になる」という事に他ならない訳で。
政府としても重要機密をマスコミにダダ漏れにされて大人しく黙認していてはメンツに関わる、と言うよりも1度でもこんな犯罪を見逃しようものならば
今後「機密」なんて存在しなくなってしまう、それこそ「各国のスパイのみなさん我が国家は政治的思惑ダダ漏れですよー♪」と宣伝するようなモノになってしまう。
当然だけどこのマスコミのやり方に対しては毅然とした態度で対峙して行かなければならない。だがしかし、国民に圧倒的不利益を与えると判っている情報を
敢えて隠ぺいする行為は政府としていかがなものなのか、それをつまびらかにする事こそが「報道の自由」なのではないか?という問題ね。

本作にはこの「事件部分」に加えて更に「【ワシントンポスト】という一地方紙のお家騒動」という背景を見せて、そこから1970年代当時のアメリカの
「女性の社会進出の難しさ」と「周囲の偏見の目と戦う覚悟」「キャリア女性の苦悩・苦労」をドラマティックに見せています。
メリル演じる「キャサリン」はワシントンポスト紙創業者の娘なんだけど、やり手男子を婿に取って当然ダディも婿を次期社長に指名して婿が後を継いでいたものの
どうやらキャサリンが45歳の時に婿が自殺したらしい(劇中でなんとなくそんなニュアンスで会話が進んでた。ロクに調べてなくてすまんねw)
で、後継者(男子)がまだ育ってない状態だったので「とりあえず創業者の血縁からって事でー」という感じでキャサリンが社主になってしまった…という状況。
まあ周囲のブレーン達は「いくら創業者一族直系とは言え今まで子育てしかしてこなかった専業主婦がお飾り社長になって何がやれるってーのよ」という
空気感バンバンな訳で。そんな中でいきなり社運が左右するレベルのとてつもない決断を迫られる事になってキャサリンもうキャパオーバーよ!みたいな感じで(薄笑)
…ここら辺りの演技はメリル・ストリープの真骨頂と言うべきかしらね。この人本当に上手過ぎて時々鼻白むのよ…それ位何やらせても上手いのよ。

更に言えばこの事件に関わった「真実を報道する事に命を賭けるマスコミ人達の心意気」とかそういう青臭くも骨太で男気感じるドラマ、って言うのかしら(萌)

今回トムはワシントンポストの編集主幹でかーなーりーのやり手、という役ドコロ。
まず誰もが目に行くのが「おぅ…今回は堂々とヅラ被って来やがったな!」って事でしょうか(ヲイ
まあ演技に関してはアレコレBBAが口挟むレベルじゃないもんねぇ。なんだろう…トムの事だから彼が演じた「ベン・ブラッドリー」という人物をきっと相当研究していて
ちょっとした仕草やクセまで見事に再現しているんだろうと思われ。まー自分この方の実際のお姿を拝見した事がないので比べようもありませんが^^;

この手の「歴史の再現ドラマ」って、誰もが結末を知っている訳だから…要するにその誰もが知っている事をどれだけドラマティックにサスペンスチックに演出して
観客達の気を惹き続けられるか、が勝負だと思うんですよね。
例えばだけど、ちょっと前に見たイーストウッドの「15時17分、パリ行き」では主演の3人を本当に事件当事者に演じさせて話題にさせましたよね。
でもイーストウッドのやり方は少々あざといと言わざるを得ない…彼は本作の前にも「ハドソン川の奇跡」という作品で機長役こそ役者が…あ、正にトム・ハンクスが
機長役を演じて、機内の乗客役を事件当事者達を集めて再現させていましたよね。このやり方は観客に訴えかけ易いけどやっぱりちょっとズルいと思う。

そう考えるとスピルバーグはやっぱり上手いなぁ、と思う。
まあ当事者達を今更集められないからねー、って言われたらその通りなんだけど(苦笑)、そーじゃなくて役者達に演じさせた上でちゃんとハラハラドキドキ感を
観客に提示していて、結末は判っているにも関わらず、しかも、長年映画の見過ぎでここんとこ「ちょっとやそっとじゃーこのBBAは泣かせられないわよっ!」
と自称しているこのアタクシが、本作の判決のくだりで不覚にもウルッと来たわマジで。「お前らよくやったなぁ!」って割と本気で思ってたわ(苦笑)
何て言えばいいんだろう…無駄に煽ってないのが逆にリアリティ持たせてる、でもきっと実際よりもうんとドラマティックに演出してるハズなんだよね、
それなのにスクリーン観てていつの間にか自分もこの劇中の奴らと一緒になってこの事件を追ってる位の気持ちにさせられてる、とでも言うのかな。
要するに「圧倒的に演出が上手い」んだろうと。スピルバーグ監督って、やっぱり本当に凄い映画人なんだな。

映画はラストでこの後アメリカを震撼させる「ウォーターゲート事件」を示唆しながら終わって行きます。この作りは洒落てますね。
そしてこの不穏な空気で幕を閉じるとスタッフロールにスクリーンが切り替わった瞬間にジョン・ウィリアムズ作のエンディングソングが流れて来る。
この曲がまたこのラストシーンを踏襲していて物凄いシンクロ率ですよ。

お前ら神か!…うん、そーだな。スピルバーグとジョン・ウィリアムズのコラボだもん。コレを「神」と言わずして何を神格化すればいいのかとw
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする