天網恢恢疎にして漏らさず

映画レビューを中心に(基本ネタバレバレです)スキーやグルメ他、日々どうでもいいような事をダラダラと綴っています。

【映画】「ジョジョ・ラビット」@4本目

2020年01月22日 | 映画感想
「ジョジョ・ラビット」

メガホンを取った「タイカ・ワイティティ」氏の名前に聞き覚えがあったのでググってみたら「マイティ・ソー バトルロイヤル」の監督さんだった。
そもそもニュージーランド出身のコメディアンなんだよね。だからだろーけどソーの時も思ったけどコメディセンスが本作でも光りまくり☆

あらすじ
第2次世界大戦下のドイツ。10歳のジョジョ(ローマン・グリフィン・デイヴィス)は、青少年集団ヒトラーユーゲントに入団し、架空の友人であるアドルフ・ヒトラー(タイカ・ワイティティ)に助けられながら一人前の兵士を目指していた。
だがジョジョは訓練中にウサギを殺すことができず、教官に“ジョジョ・ラビット”というあだ名を付けられる。(Yahoo!Movieから丸パク)

映画冒頭から監督ご自身が演じるヒトラーが登場して飛ばす飛ばすw
舞台はガチ第二次世界大戦下のドイツ、しかも戦局は連合軍に押されて敗戦色濃厚になり始めた頃。全く笑えない状況なんだけど映画全般何とも緩~い空気が流れている。
この「緩~い空気感」が絶妙で、単館系B級映画風味に極上の人間賛歌を紡ぎ上げている…久し振りに心地良い作品を観られたなぁ!と思いました。

主人公のジョジョ少年のキャラクターも実に可愛らしくて♪演じたローマン君の事は全く知りませんが、今後いい役者さんになって欲しいなぁ~^^
そして彼の周囲のキャラクターがまた秀逸で、特にジョジョの親友ヨーキー(アーチー・イェーツ。知らん子役w)がとにかくいいヤツで観ていてウキウキしたわ!
ジョジョはヒトラーユーゲントのキャンプでの弱虫のヘタレっぷりをタイトル通り「ジョジョ・ラビット」と呼ばれてバカにされるんだけど、どんなに周囲が馬鹿にしてもヨーキーだけはいつもジョジョに寄り添ってくれる。こんな友達が1人でもいたらどんなに過酷ないじめに遭ってもきっと立ち直れるだろうな、と思わされる存在。
映画中盤でロボットの被り物をして軍のお手伝いをしているジョジョとヨーキー(少年兵に格上げされてる)が街で出会うシーンがあるんだけど、そこでジョジョがサラリとヨーキーに「好きな子がいるんだけどユダヤ人なんだ」と告白すると(コレもある意味ぶったまげだけどw)、ヨーキーは「ユダヤ人なんて全然いいよ。それよりロシア人の方がもっとひどいんだぜー」と平気で切り返してて更にぶったまげたw

なんという懐の深さなんだろうと。別にジョジョの話を聞いていないというわけじゃない。(後にジョジョにユダヤ人の彼女の事を聞いてくるシーンがある)
映画冒頭からジョジョやヨーキーは思いっきりナチスのプロバガンダに洗脳されて「ユダヤ人を見つけたらぶっ殺してやるんだー!」と鼻息が荒いんだけど、子供なりに戦争を見て体験して、そして少しずつ自分の中で思考してそれぞれ成長していく。ジョジョも、ヨーキーも。それが見て取れるのが心地よい。

そしてジョジョのママをスカ子(スカーレット・ヨハンソン)がこれまたいいオンナっぷりを存分に出して演じてて観ていて気持ちいい。
彼女は(と言うか生き別れになっているジョジョのパパと共に)実はコッソリ反ナチスの活動家として運動していて、息子のジョジョが段々ナチスに洗脳されていく姿を見て心を痛めているんだけど、ジョジョに人を愛する事の素晴らしさを語って2人がサイクリングをしたり踊ったりするシーンが凄くステキだった。
どんな場面でも凛として強く、清く正しい目を持ち行動する。そういう「良き母親」を最期までジョジョに見せ続けた素晴らしい役どころだったなーと。

それからジョジョの亡くなった姉インゲに成りすましてゲシュタポの尋問から逃れようとしたユダヤ人少女エルサをキャプテンKが見逃してやるシーンも凄くジンとした。
戦争で片目を失って、それでもヒトラーユーゲントの教官として子供達を指導していたハズのキャプテンKが!?と思いながら見ていたんだけど、母親をああいう形で喪ったジョジョに対して「お母さんは素晴らしい女性だった」と慰め、そして米軍が遂に侵攻して来てジョジョと共に捕まるやジョジョが来ていたナチスの軍服を脱がせて米軍兵士の気を自分に向けさせてジョジョをそこから逃がしてやる。
ドイツ人が全員あの戦争でナチスに洗脳されまくってイカれてた訳じゃない。みんなそれぞれの目で大局を見極め、そして時に己の正義を貫いて生きていたのだと。

話の展開自体は過去に山程制作された「第二次世界大戦下のドイツで起こったドイツ人とユダヤ人の交流」系の思いっきり焼き増しみたいな感じなんですが(コラコラ)
それでもね、この独特のユーモアセンスと絶妙に緩~い感じが苛烈な戦争シーンの中にあって何処かホッコリとさせるんですよ。不思議な感覚なんです。
ジョジョの心の友人アドルフ(ヒトラー)は時に勇敢にジョジョを奮い立たせ、時に慰め、そして戦局がいよいよ怪しくなって段々狂気を現す。
その変化がジョジョの微妙な心の動きとリンクしていて、正にジョジョの心理変化に対する作用反作用の関係として描かれていて面白かったです。

戦争映画ではあるんだけど、「戦争映画」というジャンルには入らない内容。
人と人の心の機微、そして少年の成長物語を緩~く、そしてホッコリと描いた良作。こういう作品こそオスカー像を手にして欲しいなぁ!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする