天網恢恢疎にして漏らさず

映画レビューを中心に(基本ネタバレバレです)スキーやグルメ他、日々どうでもいいような事をダラダラと綴っています。

【映画】「プロミシング・ヤング・ウーマン」@29作目

2021年07月29日 | 映画感想
「プロミシング・ヤング・ウーマン」

今年のアカデミー賞最優秀脚本賞受賞作。
それどころか本作は作品賞や監督賞等の主要部門でもノミネートされていて…要するに相当評価が高い作品だったという事なんだけどー…上映館少なくね?(滝汗)
アレかキャリー・マリガン嬢が余り日本では知名度高くないから配給会社があんま金突っ込まなかったってヤツですか?^^;

あらすじ
明るい未来が約束されていると思われていたものの、理解しがたい事件によってその道を絶たれてしまったキャシー(キャリー・マリガン)。
以来、平凡な生活を送っているように思えた彼女だったが、夜になるといつもどこかへと出かけていた。彼女の謎めいた行動の裏側には、外見からは想像のできない別の顔が見え隠れしていた。(Yahoo!Movieから丸パク)

面白い構成の話だねコレは。脚本賞なーなるほどなー。
映画見始めてからしばらくはどういう事なのかちょっと分からなくて混乱するんですが、話が進んでくると色々と主人公キャシーの背景が見えてきます。
キャシーは元々は非常に成績優秀な医学生だったが(正にタイトル通りの将来の成功が約束されたうら若き女性)、大親友だった「ニーナ」が同じ学部のクソ野郎・アルにレイプされた上に告発しても誰も見方になってくれず、絶望して自殺をしてしまうという事件が起こる。この事件がきっかけでキャシーは大学を中退し今では近所のカフェでバリスタとして働き誰とも交わらずに地味に生きている。
そして夜になるとキャシーは扇情的な衣装とメイクでバーに繰り出し泥酔したフリをして、身体目当てでお持ち帰りする男達を次々制裁していくという二重生活を送っていた。
そんなある日カフェに医大時代の同級生だったライアンが偶然訪れた事がきっかけでデートをするようになる。いい感じになって来たキャシーだけど…と、まあこんな感じ。

不思議なことにニーナとの生前のやりとりのシーンとか全く出て来ない。
2人で撮った写真が部屋に飾ってあったりはするんだけど、ニーナがどういう人となりでキャシーとどういう関係だったのかをはっきり提示していないんですね。
ただ、いくら大親友だったからとは言え友達を喪ったショックが酷かったというのは分かるけど、普通大学辞めるまでしますかね?
それでずーっと観ていく内に「あー、ナルホド要するにこの2人は親友と言うよりも恋人同士だった、と考えた方がいいんだろうな」と行き着く訳です。
2人はお互いの名前を彫ったハート型のペアネックレス(ハートが2つに割れててお互いが半分を持ち合うヤツな)を身に付けているんですが、いくら仲良しとは言えこんなネックレス普通は女同士で付けるなんて有り得ないでしょうよと。要するに、まあ、そういう関係だった、という事を示唆しているんでしょうなぁ。
まあそれだったとしてもキャシーは今年30歳という設定ですよ。亡くなったの多分10年近く前ですよね?どんだけ世のオトコに復讐すれば気が済むんだか…^^;

ま、そんなこんなでコツコツと「オンナを性の捌け口としか考えてないクソ野郎ども」に制裁を下す日々を送っていたキャシーですが、同級生だったライアンと再会した事で2つの変化が起こる訳です。
1つは遅まきながらライアンとの恋の予感~♪、そしてもう1つがライアンがニーナをレイプしたクソ男・アルとも学生時代同じグループだったらしくアルのその後の消息を知る事が出来てしまい、アルが順調にキャリアを積みながらもうすぐ幸せな結婚をしようとしていると知ってしまったキャシーは今度こそ徹底的にアルに制裁を下したい!だけどライアンとはお互い結婚も意識する間柄だし、いつまでもアルに執着していていいものか…と、悶々となる訳です。
この、ライアンがアルの消息を知っていると言うとキャシーが「ライアンと仲が良かったの!?」と聞くくだりがあるんですが、その時にライアンは「いや特に仲が良かった訳じゃないけどたまたま同じグループにいたから知ってるんだよー」みたいに答えてるんですわね。コレ聞いて「あ、コレってもしかして…そういうオチ?」と思ったら、やっぱりそこは想像通りの展開でしたね。うんーコレはちょっと分かり易い展開過ぎかもーw

キャシーが「強ぇ~な」と思ったのが、必ずしも復讐の相手が「ヤリチ○野郎」だけに絞っている訳ではない、というトコロ。
レイプ騒ぎの後でニーナが必死に訴えても薄ら笑いで「どうせ彼女にも落ち度はあったんでしょ」等と御託を並べて聞き入れなかった同性の同級生や大学の学部長(♀)にも「じゃあアナタやアナタの身内が同じ立場に立ったらどうなの?」というのを実際に疑似体験させる事で鉄槌を下していく訳です。
コレいじめ問題なんかでも時々取り上げられますけど、勿論いじめをやった張本人が一番悪いのは確定なんだけど、そのいじめが起こっている様子を見て見ぬ振りする周囲もまたいじめと同じ罪なのだ、という考え方ですよね。同調圧力に屈するのもまた罪なのだ、という事でしょう。

そして、多分キャシーは自分をも「ニーナを助けられなかった」事にずっとずっと後悔しながら許せなかったのだろうと。
だからこそのこの展開なのかーと。なかなかに重たい話なんですが、本作が素晴らしいのが映画全体の色調がやたらPOPでCUTEなんですよね。
このクソヘヴィーな話がどうしてこーなった!?レベルにガーリーな感じで可愛い。キャリー・マリガンのコケティッシュな愛らしさが凄くハマっていました。
クライマックスの「ナースコスプレ」とか出来過ぎぃ~って感じw

そして「はあぁぁ!?」なクライマックスな訳ですが(苦笑)、最初は「あーコレって一応念の為に保険掛けた、って事か?」と思って観てたんですが、観終わってからつらつらと考えていく内に「いや保険掛けたんじゃない。キャシーは敢えてこうなるように仕向けていたんだ。この展開になるようにアルを誘導したんだ」と思い当たった訳で。
そう思うと余りにも緻密にして余りにも残酷、そしてこれ程までに情け容赦なく完璧な復讐劇があってよいものなのかと、感心してしまいましたよ^^;
たかだか(では決してないけどさー)レイプごときでは追い落とせなくても、事が刑事事件ともなれば絶対に逃げる事は出来ないだろうと。

でも本当はライアンの事、好きだったよねー?それはそれで切ないよねー。そんな余韻も残す…コレ男性が観たらどれ位キャシーに同調出来るんだろう?
女性は比較的受け入れ易いと思うんですよね。男性はご自身が女性を見る目に性的なモノが混じっている事を女性がどれ位嫌悪しているか理解出来ているのかな?
男性と女性で本作の感想や感じ方が随分違うのではないか?と推測する訳ですが…ちょっと男性のレビューも探して読み漁ってみようかな。それはそれで興味深いですね!
コメント
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