Vol.20「野望の果て」はこちら。
原題はDouble Exposure。二重露出、とでも訳すか。邦題どおり、今回はサブリミナルのお話。
犯罪が行われていたとき、自分のつくった未完成のフィルムに、音が入っていないからライブでナレーションを入れていた……というアリバイを今回の犯人は用いる。実はテープを再生していた単純なトリックなので、これだけなら
「犯罪オンチのうちのかみさんだって、もうちっとましなアリバイ考えますよ」
とコロンボに切り捨てられるレベル。しかし今回の主眼は、どうやって被害者を特定の時間に特定の場所に誘導できたかにある。そのために犯人は
・映画の上映前に被害者に塩辛いキャビアをふるまい
・映画館のエアコンを止め
とどめに
・フィルムにアイスティの画像を、意識されないようにインサートする
……のである。現在は禁止されているサブリミナル効果について、はじめて知ったのはこの「意識の下の映像」の初放映によってだった。お勉強になります。しかも、フィルム交換のために、フィルムの終わりの方にコインをはさんでおく、などのうれしい豆知識もしこんであり、コロンボの作り手が、映像について知悉していることが理解できる。
犯人を演じたのは「指輪の爪あと」「アリバイのダイヤル」につづいてロバート・カルプ。自分がいちばん頭がいいと思っている尊大な男、しかし内面に脆さをかかえていそうな犯人……刑事コロンボが対峙するのに、確かにもっとも適した役者かもしれない。そしてなんとなんと、この3月に彼は79才で亡くなってしまっていたのだ。なんてことだ……
犯人の車に同乗して被害者の家に行くときに、住所を言わないでおくという「古畑任三郎」の某エピソードが完全にパクったひっかけがあって笑えます。追悼ロバート・カルプとして、ぜひご鑑賞を。
Vol.22「第三の終章」につづく。