とつぶやいた瞬間から事務室は“発火”した。アニメオタクである相方や、同じくアニメ道まっしぐらの息子をもつ職員が
「あれは傑作ですっ!!!!」
「んもうね、何度息子に見せられたことか」
「理一さんがかっこいいんですよ。理一さん独身なんですよっ」
「親戚みんなのアバターがそれぞれ味があるんですー!」
こらこら。そう先走るな。
どえらい傑作であることは“匂い”でわかっていた。ヒットするであろうことも、アニメオタクでなくても簡単に予想できた。それなのに、三川イオンシネマは封切ってくれなくて、以来なんとなく見過ごしていたのである。
テーマ曲を書いた山下達郎と竹内まりやは年末の夫婦放談で「どう考えても今年(2009年)のベスト」と断言していたし、アニメにはまだけっこう冷たい各種ベストテンでも高評価をゲットしていたのに。
にしてもこんなに素晴らしい作品だったとは。ストーリーはOZ(おず……もちろん小津安二郎にひっかけてある)とよばれるネット上の仮想世界の混乱を、なんと長野のど田舎に住む90才の婆さんの誕生日に集まる面々が救うという、けっこう無理あるお話(笑)。
しかし見せる。
特に、サイバーパンクな話のくせにホームドラマの部分がまことに泣かせる。世界を救う動機が、妾の子であった自分を認めてくれた婆さんへの恩返しという、平成の世になんなんですかこれは!って展開。
「しゃべれどもしゃべれども」そして「時をかける少女」でも泣かせた脚本の奥寺佐渡子のお手柄か。なにごとも起こらないシーンの充実ぶりもおみごと。実は3回ぐらい泣きました。
でもよく考えると、一族のなかに天才ハッカー(ウィザードですわね。ここにもオズが)と格闘ゲームの世界チャンピオンが同時にいて、強引なラブコメで引きずりこまれた主人公が数学の天才とは……いやいや、何も申しますまい。「河童のクゥと夏休み」でもそうだったように、日本では、奇跡は夏休みに起こるのだから。