マネー・ボール (RHブックス・プラス) 価格:¥ 798(税込) 発売日:2006-03-02 |
軍隊を退役し、缶詰会社の警備員として暇をもてあましていたある人物が、一念発起して野球のデータ化に取り組む。どのような数字が得点に結びつき、どのような数字に意味がないのか……結果は野球人にとって認めがたいものだった。曰く
・犠打は相手にアウトを進呈する行為にすぎない
・盗塁は成功率のわりにリターンが小さい
・打点は偶然の要素が大きく、勝負強さを示すとはかぎらない
・エラーの数はその選手の守備力を示すものではない(『H』か『E』の分かれ目は主観的だから)
……そしてもっとも重要なのは出塁率であり、長打率であるとした。これが有名なセイバーメトリクスという考え方。提唱したのは警備員だったそのビル・ジェームス。そして実際のチームマネジメントに活用したのがこの書「マネー・ボール」の主人公であるオークランド・アスレチックスのGM、ビリー・ビーンだった。
野球ファンなら狂喜すること確実(あるいは激怒するかも)。以下のようなフレーズが満載だから。
「そもそも高校生選手に賭けるのは分が悪いのだ。スカウトはとかく高校生の選手を、なかでも投手をほめあげる。しかし高校生の段階でその選手の将来を予見することは不可能に近い。まだ肩が完成していないから、スカウトの評価基準はたったひとつ。速球のスピードしかない。けれども本来、投手のいちばん重要な能力は、力まかせの剛速球ではなく、打者をあざむくテクニックにある。」
「データに信頼を置けるところが大学生選手のありがたい点だ。高校生選手にくらべて試合数がはるかに多く、対戦相手も充実している。サンプルの規模がじゅうぶん大きいので、真の実力がより正確に表れる。」
……これを日本に敷衍できるかは微妙。日本においては高校野球が特別の地位を占めているから。むこうの人たちは甲子園の中継を見て「日本のプロはレベルが低いなあ」と誤解するほどだというし。全盛期のPL学園は、ぶっちゃけ当時の六大学とどちらが強かったのだろう。2球目につづく。