Vol.37「さらば提督」はこちら。
人気ミステリシリーズの主人公が邦題のように殺人を犯す回。楽屋オチ満載である以上になかなか味わい深いエピソード。
視聴率が下がり気味で、しかしエミー賞をとっていて高額なギャラが必要な俳優を演じるのはピーター・フォーク、ではなくて「スター・トレック」のカーク船長を演じたウィリアム・シャトナー。シャレがきついったら。
「テレビ界では、かけがえのない俳優などいないんだ」
というスタッフの呪詛は、次第にコロンボのなかで発言力を増し、同時にギャラも高くなったピーター・フォークへの皮肉にもなっている。だから前回で最終回になるかも、という流れ。堂々と出演するピーター・フォークがいいですわな。
まだ高価だったビデオ装置を使ってアリバイ工作をするルーサン。彼が殺したのは自らをテレビスターに仕立て上げた元恋人。撮影所の小道具を使い、元兵士である特技で殺害した彼は、コロンボに次第に追いつめられる。殺人現場にいたカフェのオヤジは犯人を
「身の丈は……そうだな、あんたぐらい」
「中背ね」とコロンボ。
「中背?いや、ちょっと低いぐらいかな。」
くさるコロンボがかわいい。それ以上に、犯人であるシャトナーはシークレット・ブーツを履いている設定で、よくこんな役を受けたよな。
この回がうまいのは、制作するユニバーサルのスタジオがそのまま使える以上に(JAWSのアトラクションが出てきます)、犯人と、犯人が演じるルーサン警部、そしてコロンボという三者のやりとりが味わえること。
ルーサン警部であるプライドのために、シャトナーはコロンボにヒントを与えさえする。ちょっと間抜けなミスを指摘されたルーサン警部は最後にこう語る。
「殺人のシーンのリハーサルはやったことがないんだ」
吹替は山城新伍。うまい。被害者に扮したローラ・オルブライトは彼好みの女優だったはずで、現物に会いたかったと思いながら吹き替えていたのじゃないかしら(笑)
Vol.39「黄金のバックル」につづく。