私は無実です 検察と闘った厚労省官僚村木厚子の445日 価格:¥ 1,680(税込) 発売日:2010-09-07 |
村木厚子(元)課長が無罪になったことはまことにめでたいことだし、弁護側の活動が有効だったことも確かだ。でも、この本を読むと無罪獲得がいかにきわどいライン上にあったかがよくわかる。あぶないところだったのである。
よく知られているように、障害者郵便制度悪用事件は
・凛の会などの組織が、障害者団体であるとの証明書を使って、家電量販店などのDMを心身障害者用低料第三種郵便物として廉価に発送することを目的とした犯罪で
・その証明書を担当係長が勝手につくったものか、上司の村木課長が関与したかが問われ
・同時に民主党の政治家がその口利きをしたのではないかと噂された
事件だ。告発したのは大阪地検特捜部。
政治家とは石井一のことであり、ラジオでその報道を聴いたわたしは、「これが本当なら民主党政権はもたないなあ」と思ったのをおぼえている。
ところが、この事件に関しては「どうも課長は無罪なのではないか」という話がネットでも出ていたし、大手メディアのかたすみでも語られるようになっていた。というのも、村木課長は徹底して無罪を主張していたし、検察の動きも不自然になっていたのでマスコミも考えこんだのだろう。ひょっとして、と。
前に「特捜のエース」で特集したように、冤罪を立証できたのは
・被告自身が名探偵だったこと
・関与した政治家に対する調査が不十分だったこと
・検察の手法に対する批判の土壌が醸成されていたこと
などの条件がそろっていたからだ。
ひとつひとつ見ていこう。まず、被告自身が無罪である主張をまったく曲げなかったのが強い。検察はその取り調べのなかで、「執行猶予がつけばたいしたことはない」などと甘い言葉もささやいて有罪を認めさせようとしたが、職業人としてのプライドがそれを許さなかった。
「彼らがつくった調書を読んで、この人たちは霞ヶ関を知らないと思いました」
という彼女の感想など、地方大学出身キャリアの凄みすら感じさせる。だてにこの業界で食っちゃいないぞと。くわえて……以下次号。