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さて、松竹版「八つ墓村」には、萩原健一以外にそれはそれは豪華な女優陣が。
未亡人美也子に小川真由美、姉春代に山本陽子、亡き母に中野良子である。若い観客にはおわかりにならないかもしれないが、70年代のこの三人といえば大女優である。
まあ、いまは小川は細川俊之との娘に宗教がらみのスキャンダルを暴露され、山本陽子は沖田浩之と……まあ、よけいなことです。
いかにも都会的な美也子と、旧家である多治見家になじんでいる病弱な春代。このふたりの対照と、その間をゆれ動く辰弥という存在のあやふやさがドラマの基本線。
実は原作や東宝版には里村典子という重要人物が出てくるし、遺産相続候補者で医師である久野がかなり大きな存在だけれど、そのあたりはバッサリ。そりゃま、ここまでの役者をそろえてコメディリリーフでもある藤岡琢也(久野)が犯人でしたでは客が納得しないもんね
映画的に絶妙だったのは「濃茶の尼(こいちゃのあま)」。すばらしいネーミングじゃないですか。こいちゃのあま。何度かつぶやいてみましたもの。原作では、盗癖があって事件のキーポイントになる尼僧だけれど、松竹版における最大の役割は、例の
「たたぁりぃじゃあああああ」
と叫ぶことね。彼女は要蔵によって夫と子どもを惨殺されていることもあって、血をひく辰弥を憎悪していて、丑松が死んだことも辰弥のせいだと村人を扇動している。
悪意と憎悪に囲まれながら辰弥は多治見家に入る。待っていたのは要蔵の叔母である双子の老婆、小竹と小梅。これもすばらしいネーミングじゃないですかっ。「犬神家の一族」の松子・竹子・梅子とタメをはってます(笑)。
小竹を演じたのは市原悦子。小梅は山口仁奈子というよくしらない女優さんで、ひょっとしたら市原とクリソツだったことが起用の決め手?以下次号。
ポイズン・ママ―母・小川真由美との40年戦争 価格:¥ 1,365(税込) 発売日:2012-03 |