PART8はこちら。
辰弥は村人の怨嗟の的となり、行動の自由がうばわれる。そしてお膳の料理を自宅で食べた濃茶の尼(くどいようだけどすばらしい名前だなあ)がまたしても毒殺される。これで、四人目の犠牲者。
つづいて、薬の出所だった久野医師(藤岡琢也)が失踪し、事件は混迷を極める。主犯だと(観客は誰もそう思っていないけれど)警察がにらんでいた容疑者がいなくなったので。
さらに洞窟に犯人によって拉致された小梅が絞殺、久野も死体で発見されたことで、殺人は計6件。タイトルからもわかるように、これで殺人がおさまるはずがない。あと二人の被害者が出ると指折り数えた観客はみんな思っている。
問題は、はたして犯人は誰なのか。なんのために連続殺人を行っているのか……
ここでいろいろと整理してみましょう。わたしもこんがらがってきた。
・なぜ双子のうち、小梅だけが殺されて小竹は生き残っているのか
・久弥、久野、小梅は多治見の家の者たちだが、工藤校長と濃茶の尼が殺された理由は何か
・辰弥は殺害候補に入っていないのか。
・多治見家を根絶やしにするのが目的なら、なぜ一気に大量殺人をしかけないのか。その機会は何度かあったはずなのに。
・金田一はなにをやっているのか。
……まあ、最後のふたつは小説や映画を面白くするためにしかたないですけど。
錯綜したこれらの疑問に、原作はもちろん(ある程度)答えている。そしてリメイクされた東宝版もミステリとしてちゃんと情報を提供している。ところが、松竹版はある理由のためにそのあたりをすっ飛ばしているんですな。
たとえば、小梅が殺害された件では、東宝版においては犯人は小竹と小梅の区別がつかないシーンが最初の方にちゃんと用意されている(松竹版にもちびっとはあるけれど)。あるいは濃茶の尼の狂気には裏があったことも説明されている。
でも、だからといって東宝版の方が面白いとはいかないのが映画の不思議。次回からはネタバレ全開です。