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それでは三國連太郎が語る、同業者への評価とは……(インタビュアーは佐野眞一)
-徹底的に秘密主義の人だったんですね。
三國:僕も一回、玄関まで行ったことがありましたけどね。
-玄関まで行っても家には入れないんですね。
三國:ええ。山田(洋次)さんにもお世辞一つ言わなかった。仕事が終わったら赤の他人。そのくらい冷徹な人でしたね。本心は誰にも見せなかった。
……かつて「おかしな男」(小林信彦)を特集したときにふれたように、渥美清の過去は壮絶なものだったようだ。自分の死、他人の死を見つめたために、虚無的になっていたのは仕方がない。しかしそんな暗黒をかかえながら、共演者たちをアドリブ演技で笑わせずにはおれないあたりの矛盾がすばらしい。
クレバーな渥美が、山田洋次によって歴史に残ったことを意識していなかったはずはなく、実際に感謝していただろうが、同時に車寅次郎という役柄に規定されてしまったことに、屈託がなかったともいえないだろう。
おそらく自由に役柄を選択し、気分次第で演じていた三國連太郎を、渥美はうらやみ、そして嫉妬もしていたと思う。もちろん、三國には三國の地獄があったわけだが。
予告すると、これからは他の俳優や監督をぼろくそに言うのがほとんどなので、三國の渥美清に関するコメントはひょっとしたら絶賛なのかも。
わたしは芸能界というところがよくわからないけれど、そんなふたりが、連れだって自宅(前までだけってのが可笑しい)を訪れたりもしているわけだ。プロはプロを知る、ですかね。
次回は鶴田浩二篇。
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