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横溝正史の原作を映像化したなかで、有名なのは77年の松竹版(野村芳太郎監督)と96年の東宝版(市川崑監督)のふたつ。他にも何度も何度もテレビドラマ化されているので、おおよそのストーリーはおなじみかと。
わたしが初めて「八つ墓村」に接したのは少年マガジンに連載された影丸譲也の劇画。
これが怖かったー。ニコニコ笑っている双子のばあさん(小竹と小梅)がなにしろ不気味。思えばこれが横溝正史初体験。つづいて例の角川書店の映画大攻勢が始まったわけ。
その1作目「犬神家の一族」(76年)が大ヒットしたので松竹もあとを追いかけたように時系列では見える。
でもこれは前にもふれたように、金田一耕助ものの代表作といえばやはり「犬神家~」よりも「八つ墓村」。角川春樹はまず松竹にこちらの映画化を持ちかけたのだ。
ところが、松竹がいつまでも動き出さないものだから(当時の映画会社は書店の若僧の売り込みを軽く見ていたわけ。今では信じられないことだけど)角川は激怒。意趣返しとばかりに東宝と組んで石坂浩二で金田一シリーズを製作して成功。
松竹がしかし「八つ墓村」でやりたかったことはどうも路線が違って、なにしろ金田一耕助が渥美清であることに象徴されるように、むしろ「砂の器」的な感動?大作に仕立てたのだ。わたしはこういう経緯から、どうも松竹はダメだなあ、石坂金田一が先行したのだから「八つ墓村」の興行は惨敗するに違いないと思っていた。
しかもテレビスポットが
「たぁたぁりぃじゃ~」
である。だっせー。
でも結果的にはこちらも大ヒットしたのだった。よくわからん。
そして96年の東宝版は、市川崑が“やり残した”横溝正史の代表作を、金田一耕助役に豊川悦司を配して敢行。鉄壁の布陣に見えたがこちらは惨敗。ほんとうに、映画興行というのはわからないものなのだった。以下次号。