「えっとねー、長井って小国より標高が200mぐらい高いんですよ」
事務室で英語教師が意外なうんちくを。
「どうしてそんなこと知ってるの?」
「むかし乗ってたクルマに高度計つけてたんです。バラードCR-Xだったんですけど(笑)」
うわあ、久しぶりに聞くなあその族グルマ。
「○○センセイは(スカイライン)RSターボに乗ってたらしいっすよ」
「あ、オレはその鉄仮面の前の世代だ。ノンターボのRS。」
ことほどさように、中年男たちには“族ゴコロ”とでもいうべき車への偏愛がある。
「ドライヴ」という、味もそっけもない、だからこそ期待させるタイトルの映画に、たくさんの中年がつめかけているのには驚いた。実は復活したハチロクでも買いたい層?
オープニングの逃走シーンはよく考えてある。犯罪者を逃がすために、ヘリやパトカーからどう隠れるかがうまい。
同様の小細工でわたしの世代が思い出すのはウォルター・ヒルの「ザ・ドライバー」。絶妙の車両感覚で観客をうならせたあの作品(主演ライアン・オニール、イザベル・アジャーニ!)と同様に、甘いマスクの“逃げ屋”が、プロとしての静かな生活からどう逸脱していくかが描かれている。
わたし好みのぬるい恋愛劇が続くので、どこがR15+なのかなあと思ったら、観客がみんなどんびきしたあの瞬間から地獄絵開始。こしゃくなカーチェイスを展開してほしいという願いとは違った方向に。
まあ、ちかごろハイブリッドだのEVだのとクルマがエコ方面に向かうのは仕方がないとはいえ、映画ぐらい、燃費悪そうなアメ車がガソリンをぶんまきながら疾走するのもいいじゃないですか。
寡黙な主人公の過去が、血まみれになっても脱ごうとしなかったサソリ模様のアウターでしか説明されないスタイリッシュさはおみごと。実はこれを見てから「マリリン」も観ようと思ってたのにお腹いっぱい。族ゴコロが満足したので、スケベごころの方まで手が回りませんでした。