わたしは三国志の世界に昏い。いやもちろん、魏・蜀・呉がくんずほぐれつするお話のなかに、諸葛孔明、関羽、張飛、趙雲が出てきて大活躍するんだよな、程度は承知している。映画「レッド・クリフ」も見ているので、赤壁の戦いの帰趨もなんとか。
そんなわたしが「泣き虫弱虫諸葛孔明」を第壱部、第弐部、第参部と読み進めてきたのである。要するに、このシリーズでわたしは三国志を学んでいるのだ。これは幸せなことなんですか(笑)
なにしろキャラが立ちすぎている。
孔明は不思議ちゃんだし、劉備玄徳は性格破綻者&人たらし。曹操は戦に強く文化人、しかし何かが欠格している。呉(くれ、じゃないですよ。ご、ですよ)の孫権にいたっては、広島やくざそのものとして描かれ、広能や山守親分が山口組に翻弄される姿をほうふつとさせる(彼の弱点が、呉の人口が少なく、ために兵站どころか直接の戦闘要員が足りないあたりは説得力ある)。関羽や張飛は完全に化け物あつかいで……いいんですか真の三国志ファンのみなさん。
しかし白髪三千丈の国のことだから、三国志で描かれた故事の多くは、実はこの酒見バージョンの方が事実に近いのかもしれない。
呆然としたのは、この第四部において、曹操も劉備も関羽も張飛もみーんな死んでしまうのである。残るヒーローは孔明と趙雲だけ。どうなるんですかこれから!?
あ、やはりわたしも三国志の世界にどっぷりとはまってしまったようだ。おそるべし三国志。おそるべし酒見賢一。
思い起こせば、彼のデビュー作「後宮小説」を絶讃し、天才出現と騒いでくれたのは匈奴の、じゃなくて郷土の誇り、井上ひさしだったなあ。
第伍部につづく。