第十五回「秀吉」はこちら。
先週は地震の日々だった。こういうとき日本人はNHKについチャンネルを合わせるものなのである。これはもうしょうがない。残念なことにそのNHKの速報が拙劣だったことがニュースになっていたようだけれども、報道の視聴率トップテンはすべてNHK。
ドラマがそこに引きずられたわけでもないでしょうが、前回の視聴率はめずらしく予想が当たって18.3%と好成績。裏のイッテQが19%かせいだ上での数字なのでこれは立派でしょう。
今回は、脚本家として会心の出来だったのではないだろうか。
淀君(竹内結子)、秀吉(小日向文世)、信繁(堺雅人)、きり(長澤まさみ)、秀次(新納慎也)がからんだラブコメに見せながら、この恋愛ゲームに負けたら死が待っているという状況を描き(恋愛が成就した瞬間に加藤清正に殺されるのだ)、それ以上に信繁がその状況を利用しようとするあたりまで突っ走る。
シュガーコーティングされたラブコメにどうしたって見える。しかし淀君の暴力的な無邪気さが、実は過去の壮絶な体験にもとづくことをうっすらと匂わせ、その解説を柄の大きい大蔵卿局(峯村リエ、身長は170cm超)に語らせるあたり、うまい。
秀吉(と三成)はタイトルどおり社会人らしく表裏ある行動をとり、真田は翻弄される。またしても芸能面を騒がせている吉田羊が本多忠勝の娘として登場し、真田をぶっつぶすと気炎を上げる。次のシーンでは、のちに彼女の夫となる信幸(大泉洋)がうろたえているあたりの仕掛けもいい。
この人が長生きしたら様相は変わっていただろう羽柴秀長の述懐が泣かせる。
「わしらは、今はこんな立派な着物を着ているが、もとは中村の百姓。(現状に)心が追いついていないのじゃ」
は、秀吉の孤独もうかがわせて深い。
秀長役の千葉哲也、大蔵卿局の峯村リエ、三谷ドラマレギュラーの近藤芳正、小林隆など、小劇場出身者がのびのびと活躍していてすばらしい。今回も18%キープと読みました!
第十七回「再会」につづく。