その132「隠蔽捜査9 探花」はこちら。
ミャンマーという国がよく理解できない。いやもちろん存在としてのアウンサンスーチーとかロヒンギャとかは認識していても、あの国がどのようにして情勢が二転三転しているのか、さっぱりわからないのだ。理解が「ビルマの竪琴」レベルで止まってしまっている。
月村良衛は機龍警察シリーズの新作の舞台にミャンマーを選んだ。特捜部長の沖津は、警視庁の傭兵(これって会計年度任用職員ってこと?)である姿、ライザ、オズノフの三名を、指名手配犯の身柄を引き取るために派遣した。
どう考えても成功するはずのない作戦。しかも、ミャンマーに行くということは、彼らが機龍=ドラグーンに騎乗できないのだ。
現実のほうもこの小説とシンクロしはじめ、雑誌連載中に軍事クーデターが勃発。頭をかかえた月村は、しかしこの状況をすら巻き込んで豪胆に突き進む。
白骨街道とは、第二次世界大戦におけるビルマ戦線で行われたインパール作戦(日本軍にとって史上最悪の作戦として知られる)のため、日本兵が死屍累々と連なる道のこと。陸軍の無責任体質の象徴であり、月村は現在の日本も、同様の道を進んでいると感じることからこの名をつけたそうだ。
威勢のいいことばかり言い連ねた元首相の死にざま、多くの借金をのちの世代に押しつける経済政策、金まみれの五輪……確かにこの作品のキャッチコピーである
「日本はもう終わっているのか?」
を実感。ミャンマーも腐っているが、日本もまた。
しかし特捜部のメンバーたちは、そのことに抗っている。抗い続けている。メカの動きの描写からは、機械油の匂いまで立ちのぼるかのよう。傑作だ。
その134「教場X」につづく。
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