誰もが知っている日本昔ばなしを使ってあらゆるタイプのミステリに仕立て上げる……いやはや笑ったなあ。この笑いは、意外なほど苦い味わいに裏打ちされているからこそ。
たとえば1作目は一寸法師。密室殺人とアリバイトリックの複合技。一寸法師しか出入りできないすき間しかない密室での殺人。しかし被害者が死んだとき、一寸法師は鬼の腹のなかにいた……あははは。
すばらしいのは、わたしたちにおなじみの要素がすべてきっちりはめ込まれていること。この場合で言えば、打ち出の小槌がどのように使われるかだ。
花咲か爺さんはダイイングメッセージもので、ほとんどイヤミスに近い。つるの恩返しは叙述トリックで、浦島太郎は竜宮城における密室殺人(人じゃないけど)。
わたしが好きなのは最後の桃太郎かな。赤鬼、青鬼、黒鬼などが登場し、クリスティの高名な作品をひねって見せている(あんまりひねってないとも言える)初めて読む作家だけど、やるなーと思いました。
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